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未成年者の悪事は親の責任か。

2014.03.18 [ 小西 政広 ]

未成年者が,物を盗んだり,人を殴って怪我をさせた場合,未成年者自身が損害を賠償する義務を負います。

しかし,未成年者はほとんどお金などありませんから,そのような被害に遭った方からは,その子の親に責任がないのか,という相談を受けることがよくあります。

法律上,他人がやったことについて責任を負うことがないのが原則です。

そして,親と子についても,法律上(当然ですが)別個の人格と扱われますので,子どものやったことについて,親が当然に責任を負うということにはなっていません。

しかし,これについては,

民法714条1項において,未成年者が,「自己の行為の責任を弁識するに足りる知能」を有していないときには,その親が損害を賠償する責任を負う,と規定されています。

この「自己の行為の責任を弁識するに足りる知能」とは,通常12歳前後で取得するもの,と解釈されています。

では,12歳前後を超えた子どもの親は,一切責任を負わなくて良いのでしょうか。

明確に規定した法律はありませんが,判例により判断されています。

未成年者が責任能力を有する場合であっても監督義務者の義務違反と当該未成年者の不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係を認めうるときは,監督義務者につき民法709条に基づく不法行為が成立する(最判昭和49年3月22日民集28巻2号347頁参照)

未成年者の親としては,子どもが他人に迷惑をかけないよう,できる限り注意すべき法的義務があるということですね。

家事労働は女性のもの?

2014.03.18 [ 小西 政広 ]

他人のための家事に従事する主婦が交通事故に遭って,家事ができなくなってしまった場合,

その家事ができない期間については,収入の減少がなくとも,事故の加害者に休業による損害を請求することができます。

家事労働を金銭に換算する場合,賃金センサスという平均賃金の統計により,

女性で,学歴を問わず,年齢を問わず,

とした場合の平均年収を基礎として1日当たりいくら,と算出します。

この家事労働ですが,現在の裁判実務では,主婦ではなく,主夫の場合にも,女性の平均賃金を採用します。

そうなると,主婦労働は原則として女性のもの,と裁判所が宣明していることにならないでしょうか。

家事は本来女性がやるものなんだから,その労働の対価を考えるのに女性の平均賃金を使うのは当然でしょう,と。

家事は女性がするもの,と決めた法律などありませんし,時代の趨勢からすれば,このような解釈にはそれを裏付ける事実がないと思います。

家事労働の対価は,男女併せた平均賃金と解釈すべきでしょう。

刑事事件の専門用語

2014.03.18 [ 齋藤 健太郎 ]

刑事事件で接見に行くと,よく専門用語(隠語)を用いている被疑者,被告人がいます。たいていは,覚せい剤などで何度も逮捕されているとか,いわゆる893の関係の方が多いです。
ここで,「それなに?」なんて聞いたりすると,よくわかっていない弁護人だと思って舐められるので注意が必要です。

わかりやすいところでは,「ガサ」なんてありますよね。
捜索差押えのことです。ガサ入れなんていいますね。
パクられる(逮捕)とか,チャカ(拳銃)とか,マッポ(警察官)なんてのは知っている人も多いかもしれません。「マエがある」といわれれば前科者ですね。

たとえば,「弁当持ち」なんていわれてわかりますか?
これは執行猶予中のことをいいます。執行猶予中の場合に犯罪を犯すと,猶予されていた分も服役しなくてはならないので大変です。それを食べたらなくなってしまう弁当にたとえたとかたとえないとか・・・。
「チンコロ」はなんでしょう。
これはよく語源がわかりませんが,要するにチクリです。自分の刑を軽くするために,覚せい剤の売人の名前を出すなんてことはよくあります。
「おれ,弁当しょってるからおしまいですわ。あの野郎チンコロしやがって」なんて言われて,「え?弁当販売業をなさっているのですか?」なんて言ったら,「にーちゃんトーシロやな」と言われてもうおしまいです。

では,ポンプとか言われるものはなんでしょう?
これは,覚せい剤を使用するときに使う注射器のことですね。
たしかにポンプといわれればポンプ。
ガンジャ・・・これは大麻ですね。

全く知らなくてもいいお話でした。

父親を知る権利

2014.03.18 [ 齋藤 健太郎 ]

弁護士をしていると,よく「人権」や「権利」という言葉を使いますし,そういう言葉に敏感になっていきますが,果たして「人権」というのは何か,「権利」というのは何かといわれると,実はすごく難しい問題です。

法律相談を受けていると,「先生,これは人権侵害じゃないですか!?」などということを言われる方もおられますが,大抵は,人権侵害という表現が適切ではない場合も多いです。「酷い扱いを受けている」ということが直ちに人権侵害というわけではありません。一つの感情表現としては十分に理解出来るのですが。

では,「権利」というのは一体何なのでしょうか。

最近,精子ドナーによって生まれた試験管ベビーが,父親に会うために情報の開示を病院に対して求めるという裁判が起こされたというニュースを読みました。
通常は,ドナーになる場合には,自分が父親であるということは開示しないという約束のもとに提供をしているはずです。しかし,子供の側に立って見れば,自分の血の繋がった父親が誰なのかという情報がすぐそこにあるのに,それを知ることができないといわれると,納得できないという気持ちになるでしょう。父親を知らなくてもいいと思ったのは母親であって子供ではありません。それを「父親に知る権利」というのであれば,尊重されるべきものだということもいえるかもしれません。

ドイツでは,父親を知る権利が裁判で認められて,父親に会うことを実現したということがあったようです。そこでは,やはり父親を知ることはとても重要なことだと判断されたようです。
なんだかとても心の温まる話に思えますが,父親が会いたいと思っていない場合がほとんどでしょうし,その結果家庭を崩壊しかねない問題も生じさせることになるでしょう。

一方で,アメリカでは,精子ドナーの父親に対して,養育費の支払請求がなされるという事件もあったようです。父親を知る権利を行使した結果,養育費を支払ってもらう権利というところまで波及するとこれは大変な問題です。日本でも,認知請求という形で同じ問題が起きる可能性は十分にあるでしょう。

ちなみに,アメリカでは,一人の精子ドナーから150人以上の子供が産まれている場合もあるようですので,そうなるとこれは大変なことになります。父親を知る権利を行使した結果,養育費の支払請求が多数発生したり,近親相姦が発覚するという事態も考えられます・・・。

150人の隠し子騒動なんて私には耐えられません。
「権利」というものの難しさを感じる話でした。

医療事件における調査について

2014.03.17 [ 齋藤 健太郎 ]

医療事件においては,一般の法律相談とは違って,調査がとても大きなウエイトを占めています。
一般の法律相談の場合には,相談を受けた時点で,知識と経験から一定の答えを出すことができますが,医療事件の場合には,そうはいきません。

とはいえ,色々な医療事件をやっていると,詳しい知識を得ていない段階で,ある程度の見通しを付けることはできるようになりますが,それでも調査をしてみると全く結論が異なってくるということもあります。

では,実際にどのように調査をしているのでしょうか。
私の場合は大抵は以下のような方法で調査をしています。

1 まずは,問題となる疾患について,インターネットで大まかな情報を入れます。今の時代,インターネットを活用しない手はありません。わかりやすく論じているページや画像が豊富なページなども検索によって出てきます。

2 薬剤については,「添付文書」というものが,ネット上で見られるのでそれを確認します。

3 「今日の診療プレミアム Web版」というのに登録しているので,そこで基本的な知識を得ます。
これは有料なのですが,私にとっては欠かせないツールになっています。ウェブ版なので,毎年更新されますので,常に新しい知見を得ることができます。もっとも,生理学などの基本は不足していますし,専門性が高い場合や特に外科系の場合には情報がほとんどありませんので,疾患についての一般的な知識を得るためのものと考えています。

4 文献のうち日本の医学雑誌に掲載されているものについては,「医中誌」という有料の検索サイトがあります。そこから文献を探していくこともあります。概要などはそのサイト内で見られるのですが,中身を読みたいときは購入するしかないので,それなりに費用がかかってしまうのが難点です。
 アメリカの文献を探す場合には,PubMedというものがあるので,それで検索することになります。これは完全に無料なので助かります。日本にもCinii(サイニィ)というサイトがあり,日本の雑誌をかなり検索できるのですが,やはり医中誌にはかないません。

5 それ以外にも,ハリソン内科学という書籍,解剖学の本,生理学の本などを引っ張り出しながら調査をしていきます。北大医学部の図書館や札医大の図書館も重宝します。

6 何より大切なのは,医療記録を仮説を立てながら繰り返し読み込むことでしょう。カルテが読めないほどの場合には,コムルという組織や医療事故情報センターというところに医療翻訳の依頼をします。
 カルテを読んでいるうちに,仮説を裏付ける事実が出てくることがあります。宝探しのような感覚でそれなりに興奮します。できるだけ視野を広くもって,最初から特定せずにあらゆる可能性を考えていくことが大切だと思います。たとえば診断した医者の考えを追いかけるだけでは真実は明らかになりません。見落としの事案などであれば,その医師は見落としているのですから,思考を辿っても誤った方向に行くだけです。客観的な検査結果などを軸に事実を組み立てていくという作業が不可欠となります。

7 それらの調査を踏まえて,専門家の医師に相談しに行きます。場合によっては,一般的な相談をよく知っている医師に最初に相談することもあります。そこで大体のあたりをつけて,さらに専門家の先生に話を聞くこともあります。医師に話を聞く前にある程度の調査をしていないと,疑問を持つことすらできず,十分な調査はできません。
 医師は,元から知り合いの医師に聞くこともありますが,専門性の高い場合には,医療事故情報センターというところから紹介を受けたり,文献の著者に直接連絡をして会いにいくこともあります。また,他の医師から紹介をして頂くということもあります。本当に,そのような協力医の先生なしには私の仕事は全く成りたちません。

以上,長くなりましたが,こんな感じで調査をしています。

実務補習が終わりました

2014.03.15 [ 神村 岡 ]

15日間にわたった中小企業診断士の実務補習が,今週の月曜で終わりました。

1企業当たり5日間ずつ,3企業で15日間でしたが,一つの企業に訪問してヒアリングをしてから報告をするまでの間に,1週間程度の中日が設けられており,その中日を使って作業を行わざるをえなかったので,なかなか大変な研修でした。

ともあれ,実務補習を終えましたので,4月から中小企業診断士として登録できることになりました。

診断士の業務は,中小企業に対する経営全般のコンサルティングです。組織のあり方,マーケティングの方法,財務面の改善など,中小企業の抱える様々な問題に対して解決策を提示します。

中小企業の中には,経営者が非常にしっかりしていて,診断士の方で改めてアドバイスできることはあまりないという企業もあります。15日間の実務補習の中でも,我々実務補習生が感心してしまうような経営をされている企業もありました。しかし,そのような企業は少数派ではないかと思います。

企業を長く続けていくのは大変なことです。企業の内部と外部で様々な環境変化が起こりますから,適切に対応し続ける必要があります。

診断士は,企業が持続的に発展していくための体制作りや,様々な環境変化への対応策をアドバイスをします。
経営について体系的に学んだことがない,自分の判断だけでは不安だという経営者の方に対しては,良き相談相手として使ってもらえる存在だと思います。
また,ベテラン経営者の方にも,普段とは違う切り口からの提案や,情報提供などでお役に立てることもあると思います。

経営相談に興味がおありの方は,法律相談のついででも構いませんので,是非お気軽にご相談ください。



誤認逮捕〜明日は我が身〜

2014.03.11 [ 齋藤 健太郎 ]

 最近,主婦が誤認逮捕されたというニュースがありました。

 その件は,パチンコ店で女性客が、他の客の財布を置き引きしたとして逮捕された事件でした。
 その後,財布が店内から発見されたため,見つかった場所を撮影した別の防犯カメラの映像を調べたところ、別人が財布を捨てる姿が映っていたというのです。女性は,8日間勾留された後にようやく釈放されたのでした。


 警察が女性を逮捕したのは,防犯カメラの映像に,財布を盗られた男性が座っていた席に女性が座り、財布があった方向に手を伸ばすような様子が映っていたという理由からでした。しかし,この事件では,女性は一貫して容疑を否認していたのですから,別の防犯カメラも当然に調べるべきだったでしょう。警察も,「別のカメラの映像は確認しておらず、捜査が尽くされていなかった」として,女性に対して謝罪せざるを得ませんでした。

 

 さて,8日間の身柄拘束がなされたことに対して,どのような補償がなされるのでしょうか。

 まず,刑事補償法という法律がありますが,この法律では,最終的に無罪判決まで取らなければ補償を受けることができません。おかしな話ですが,憲法でも,「無罪の判決を受けたときは」とされているため,刑事裁判になる前に釈放された場合は含まれないのです。
 そこで,起訴前に釈放された場合については,法律ではないのですが「刑事補償規程」というものがあり,それに基づいて補償がなされることがあります。しかし,全ての場合にされるわけではなく,たとえば単に証拠が足りないという理由などで釈放された場合は含まれていませんし,検察官が判断することになっています。今回の事件のようにはっきりと犯人ではないという証拠があった事案はいいのですが,そうではない場合には補償は受けられない可能性が高いでしょう。


 それにしてもこの事件、もしも、財布が店内で見つからず、別の防犯カメラの映像チェックがなされなかったらどうなっていたのでしょうか。

 世界的には異常な数字ですが、日本では、起訴されると99.9%が有罪になります。この事件も、私のような優秀な刑事弁護人が就任しなければ,有罪になっていた可能性も否定できません。本当に恐ろしい話ですが,自分は関係ないと思ってはいけません!この事件の女性がただパチンコをしていただけであるように,誰にでも犯人にされてしまう可能性はあるのです・・・。

 

 実は誤認逮捕の問題として,ニュースやメディアに実名報道されてしまうという点もあります。一旦、実名報道がされてしまうと、今はインターネット上にも記事や記事を引用したものが残ってしまいますので,仮に、あとで誤認逮捕とわかっても、取り返しがつかないことになります。また,地方の人口の少ない地域で暮らしているような場合には,一度の報道によってその人の生活は破壊されてしまいます。

 警察も検察も,今回の事件のような,はっきりとした証拠がなければ,謝罪をすることもありませんし,「犯人ではありませんでした」なんて報道がされることもありません。一度報道された以上,犯人ではないかという疑いの目で見られ続けるリスクを負うことになります。

 そういう意味では,逮捕段階での報道についてはもっと慎重な姿勢が必要なのではないでしょうか。逆に,受け手の方も,誤認逮捕というものが十分にあり得るということを常に頭に入れてニュースを見なければなりませんね。

友達の友達は弁護士

2014.03.10 [ 齋藤 健太郎 ]

昔,鳩山邦夫さんが「友達の友達はアルカイダ」という刺激的な発言をされていました。
その趣旨はよくわかりませんし,まあはっきりいってどうでもいいのですが,最近思うのは札幌って(というよりは世の中が)思ったより狭いということです。

さすがにアルカイダまではいませんが,意外に友達の友達が友達という関係があったりします。
札幌の人口は今200万人くらいでしょうか。
それだけの人口がいるのに,簡単に繋がるというのは不思議なものです。

昔,6人紹介してもらえば世界中の誰にでも会えるという理論を聞いたことがあります。
そんな友達紹介サイトもあったように思いますが今でもあるのでしょうか?

ちょっと調べてみると・・・そうですこれです。Six degrees.com!
しかしもうすでに存在しないようです。

でも以外なことが発覚しました。
あの「GREE」はこの「Six Degrees of Separation」という理論から名前を取っているようです。
SNSの起源は,この理論だったのですね。

我々弁護士の仕事の多くは,実は前の依頼者,知人,顧問先などからの紹介で来ます。
皆さんの友達の友達は弁護士だったりしませんか?
おそらく私の知人の知人の知人の知人の知人はオバマ大統領の知人ではないかと思われます。

DNA鑑定の功罪

2014.03.10 [ 齋藤 健太郎 ]

昔は,自分の親が本当の親か,自分の子が本当の子かどうかなんてことを調べる方法はありませんでした。
顔が似ているとか,背格好が似ているとかそういうことぐらいしかなかったといえます。

ところが,DNA鑑定が出てきてから,血縁関係があるかどうかがはっきりとわかるようになりました。
また,DNA鑑定のおかげで,無罪になった方というのも沢山いらっしゃいます。DNA鑑定がなければ,犯人かどうかははっきりしないまま死ぬまで身柄を拘束されていたか,死刑になっていたという方もいるのです。
科学って素晴らしい。

しかし,家族関係というものははっきりしない方がいいことも沢山あります。

民法では,嫡出子(ちゃくしゅつし)というものがあります。昨年,最高裁で「非嫡出子」の相続分を「嫡出子」のそれの2分の1にするという法律が憲法違反とされましたので,聞いたことがある方が多いとは思います。
この制度は,通常,母親が誰かは簡単にわかるけど,父親が誰かというのはなかなかわからないことから,
「妻が婚姻中に懐胎した子は,夫の子と推定する」
とするものです。

あれれ,本当の父親じゃなくてもいいんだ・・・。
と思われる方もいるかもしれません。
そうです。誰が父親かなんてわからないんですから,ある程度確定させていかなければ社会がおかしくなってしまうので,確定させてしまおうという制度なんです。

そのために,「認知(にんち)」という制度や「嫡出否認(ちゃくしゅつひにん)」という制度があります。
お父さんの方から,「お前は私の子だよ」と認めるのが認知,逆に,「お前は俺の子じゃない」というのが嫡出否認ですが,後者については,1年間の期間制限があって,それを過ぎてしまうとできなくなります。
「親子関係不存在」という方法もあるのですが,その方法を取ることができる場合は限られています。

そのようにある程度血縁関係があるかどうかを問わずに「家族」かどうかを確定させる制度が,DNA鑑定によって事実上,崩壊しようとしています。
最近,ワイドショーを賑わせた大沢樹生さんと喜多嶋舞さんの泥沼劇なんていうのもまさにそれです。
果たして,DNA鑑定によって真実を知る方が良いのか,知らない方が良いのか。

ちなみに最近の最高裁判決で,嫡出否認の期間を過ぎてしまい,法律上は父親じゃないということはいえない場合には,養育費の請求が権利の濫用になる場合があるとされました。
血縁関係がないのに養育費を支払い続けなければならないとするのが場合によっては酷なことがあるのはよくわかります。

そういう私も子供が二人いるのでたまに心配になりますが,あまりに顔がそっくりなので多分大丈夫でしょう・・・ですよね奥様?

従業員のミスは誰の責任?

2014.03.08 [ 神村 岡 ]

アルバイト先でお皿を割ってしまった・・・
会社の車(しかも無保険)をぶつけてしまった・・・

よくある話だと思います。

このように,従業員のミスで会社に損害を与えてしまった場合,従業員は会社に対して全額を賠償しなければならないのでしょうか。

損害を与えてしまったのだから当然弁償すべきだろうと考える方もいるかと思います。

しかし,基本的に,会社から従業員に対する請求は制限されます。

なぜかと言うと,会社は従業員を使用することで利益を上げている以上,それに伴って発生してくるリスクについては負担すべきだからです。これを,「報償責任」といいます。

個人でやっていれば利益もリスクも全部負担するはずのところを,たまたま従業員を使用しているからといってリスクだけを従業員に負わせることは許されないということです。

したがって,日常的に繰り返す業務の中で,注意をしていてもたまには発生してしまうというような事故については,従業員に責任を負わせることはできません。皿を割ったというケースはこれに当たることが多いでしょう。

他方,従業員に明らかに落ち度があるという場合には,従業員も一定の責任を負うことになります。
ただし,報償責任の観点から,会社は一部しか請求することができません。その割合はケースバイケースですが,従業員の責任はかなり制限されます。

結局,従業員が意図的に会社に損害を与えたといった例外的な場合を除いて,会社も一定の責任を負うということになります。

会社としては,ミスが発生しにくい体制づくり,各種保険への加入などによって,リスクを軽減する対策を講じておくべきでしょう。

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