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出廷しないとどうなる?

2015.11.30 [ 齋藤 健太郎 ]

かの有名な野々村被告人が,初公判に欠席したとのことです。

昔,私が担当していた刑事事件でも,保釈されていた被告人が時間になっても現れず,非常に困ったことがあります。
何度電話しても出なかったため,これはもしかしたらトンズラこいたな・・・と思っていたところ,突然,法廷に現れました。裁判官もすぐには欠席扱いにせず,10分から15分くらいは待ってくれていたように記憶しています。
実は,傍聴席では別の刑事事件で逮捕しようと,多数の刑事が詰めかけていたため,被告人としては逮捕されることがわかっていて踏ん切りがつかなったのです。
案の定,裁判が終わった後に無事逮捕されました・・・。

刑事事件の場合には,基本的に被告人が出廷しないと手続を進められません。
しっかりと本人の参加のもとに手続を行うということです。
一定の軽い事件や控訴審などでは出廷しなくても良いのですが,例外的な場合です。

一方で,民事事件,すなわち犯罪を処罰するような場合ではなく,お金の貸し借りなどの事件については,弁護士が代理人として出廷していれば,それで十分です。本人が行く必要があるのは,尋問が行われる場合などに限られます。
ほとんど法廷に行くことなく進めることができます。

刑事事件では,本人が来ないと手続が進められないため,出廷しない状態が続けば,無理矢理連れてこられたりする可能性もあります。弁護人としては,そのリスクも十分に説明して,どうにか出廷をするよう勧めたに違いありません。
同様の経験をしたことのある私としては,何となく弁護人に同情してしまいますね。

ヒラモンスターの如く

2015.11.30 [ 齋藤 健太郎 ]

なんのこっちゃいと思われた方がほとんどでしょう。

ヒラモンスター,別名をアメリカドクドカゲといいます。
アメリカやメキシコにいるトカゲで,毒をもっています。

このヒラモンスターは,一度食いついたら離れないことで有名なようです。
食らいついたら離れないという意味のたとえとしても使われるようです。
日本でいえば「マムシ」でしょうか。
そもそも,マムシがそんなに執拗だというのはどこから来たのでしょうか。
基本的に噛みついたらすぐ離れるようですし・・・。

それはさておき,私が言いたかったのは,タフな事件を受けるときには,ヒラモンスターのようなど根性が必要だということです。
最初は,とても難しくてとても勝てないような事件だと思っても,事件の記録を繰り返し読み,様々な人の話を聞き,情報を集めて,文献を調査する。すると突然活路が見いだされる瞬間があります。
当然,全く見えないままの事件もありますが,最初から諦めることだけはしてはいけないというのが私の信条です。

最近もある事件で,記録を読みながら整理しているときに,ある発見をしました。
その記載が本当に私の考えているストーリーに合うものであれば,大きな裏付けになります。
そこから一気に事件が見えてきた気がしました。
実はこれまでに何人もの弁護士が関わって来た事案ですが,誰もそこには気がついていなかったようです。

この執拗さがいつか実を結ぶ日が来ると信じて頑張ります。

母国で死刑になる可能性があるから強制送還は違法

2015.11.28 [ 小西 政広 ]

http://mainichi.jp/select/news/20151128k0000m040154000c.html

本件は,在留特別許可がされるべきかどうか,ということが争点かと思いますが,在留特別許可をするかどうかについては,法務省のガイドラインがあります。

在留特別許可に係るガイドライン

母国で死刑になる可能性が高いこと,は特に在留特別許可をする要素として明記されていませんが,

その他人道的配慮を必要とするなど特別な事情があること

でしょうか。

母国の治安が非常に悪いとか,母国の法に基づかずに遺族などにより慣習として私刑が下される可能性が高いということであれば,「人道的配慮」に馴染むかと思いますが,本件では,母国で再び起訴され,法に基づいて死刑になる,ということを,日本として,人道的に配慮すべきだということになっています。日本が死刑を採用していないということであれば,より理解しやすいところですけどね。

結果として生命に危険が及ぶということに変わりはないので,結論は支持します。

TPPと著作権

2015.11.28 [ 神村 岡 ]

先日,TPPが大筋合意に至りましたが,これによって著作権法の分野でも大きな変化があると言われています。

改正が予定されているのは以下の3点です。

①著作者死後の保護期間の延長(50年→70年)

②懲罰的賠償制度の創設

③著作権侵害に対する刑罰の非親告罪化


①は,著作者の死後どれくらい,著作者の権利が保護されるかという問題です。
現状では基本的に50年なのですが,それが70年になりそうということです。

②著作権者が実際に被った損害だけでなく,加害者に対する懲罰的な意味合いで,それ以上の損害賠償を認めるという制度です。
アメリカでは,この懲罰的賠償制度は著作権に限らず一般的ですが,日本では一切採用されていません。ですから,それなりにインパクトのある改正といえます。

③親告罪というのは,被害者の告訴がなければ刑事事件として立件できない犯罪のことです。
現在では,著作権の侵害はこの親告罪に当たりますが,非親告罪化するというのは,親告罪でなくしようということです。
ただし,非親告罪化する範囲にはかなり限定があり,「商業的規模の侵害」に限られ,かつ,「原作等の市場での収益性に大きな影響を与えない場合は除外」するとされています。
ですから,これらに該当しない一般的な小規模な侵害行為は,依然として親告罪にとどまるということになりそうですので,普通の人にとってはあまり影響は大きくないでしょう。

司法試験と暗記

2015.11.24 [ 小西 政広 ]

司法試験についての話題になると,よく,あんな分厚い六法全書全部覚えるんでしょ?

といわれることがありますが,あんなの覚えられません。

では暗記が必要ないかというと,もちろんある程度は必要になります。

この「ある程度」は,人によって異なります。

司法試験の勉強を始めた頃によく言われていたのは,

条文は覚えなくてもよい,六法全書を開いて,該当しそうな条文を探すことができればよい

ということです。試験中に六法を参照することはできます。

しかし最終的には,これでは足りないと思いました。

特に民法については,全部で1044条あり,途中枝番もあり,複数項があったりするので条項数はもっと多いのですが,これを暗記するようにしていました。

必要な情報はまず観念して選別をせずに暗記してしまうと,その知識を前提として,思考のスピードがとても速くなったというのが実感としてあります。暗記だけで終わってしまってはだめです。

人によって司法試験へのアプローチはいろいろあると思いますが,司法試験に限らず,受験生には,「観念して暗記する」という方法もお勧めしたいところです。

株主総会やってますか。

2015.11.23 [ 小西 政広 ]

中小企業であっても,株主総会,取締役会を開かなくてもよいということは全くありません。

もし株主があなた一人なのであれば,それほど気にする必要はありません。

しかしそうでなければ,いくら近しい人間だけが株主だからといって,招集通知も出していない,もちろん出席もしていない,というか実際開催もされていない,株主総会の議事録だけ作って,株主総会をやったようにみせるのは極めて危険です。

株主総会が不存在であったということになり,適法にあったように見せかけられた株主の決定が全てなかったことにされます。

近しい人間だからとはいっても,株主として出資もしているのであれば,いつそのようなアクションを起こしてもおかしくはないのです。

当事務所では,中小企業の株主総会・取締役会について,無効・不存在にならず,かつ日常業務も阻害しない平時の手続の進め方の提案,荒れる可能性のある株主総会・取締役会のマニュアル作成などを行っています。
これまで杜撰にやってきて今更どうしようもないと考えている会社の相談も受けておりますので,会社として重要な決定をする前に,是非ご相談下さい。

遺言書に斜線を引いたら,遺言書は無効。

2015.11.23 [ 小西 政広 ]

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151120/k10010314161000.html

最高裁は,遺言者が,遺言書の全体に斜線を引いたら,遺言者自身が故意にその遺言書を破棄したものと取り扱うとして,遺言書を無効にすると判断しました。

この事例では,遺言者自身が遺言書に斜線を引いたという事実が争われていなかったようですが,斜線である以上,遺言者でない相続人がそれを行うことも容易でしょう。

自分に都合の悪い,封印されていない自筆の遺言書をたまたま発見した相続人が,定規でまっすぐ線を引いてしまうようなことも想定はできます。

もっとも,斜線を引いたのが誰か分からないというような事案であれば,今回の判例と同じ結論にはもちろんなりません。

しかし,遺言者としてはそのようなことをされては折角遺言書を残した意味がありません。紛争は必ず起きてしまいます。

いずれにしても,自筆での遺言は,結局相続人間の紛争を防ぐ力が余りありません。その有効性を巡って裁判となりやすいからです。遺言書を残す以上,より紛争可能性が少ない公正証書とすべきです。

公序良俗違反

2015.11.21 [ 神村 岡 ]

民法の法律行為の章の最初の条文,民法90条に,「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。」と規定されています。

法律家の間では,「公の秩序又は善良の風俗」を略して公序良俗と言われます。
条文の内容を言い換えると,社会的妥当性を欠く契約は効力を認めないということです。

基本的に,何か約束事(契約)をしたら守らなければなりません。法律上の義務にもなります。
その例外の一つが公序良俗違反で,公序良俗に反する約束をしても法律上は無効です。

例えば,何らかの犯罪行為を犯す対価として報酬を与えるという内容の契約をしたとしても,社会的妥当性がありませんので,無効とされます。

また,例えば500万円のお金を貸す際に,3000万円の不動産を担保にして,期限までに支払えなかったらその不動産を債務弁済の代わりに譲り受けるという契約をしたとします。これも,相手の弱い立場を利用して暴利を得ようとするもので,公序良俗違反に当たります(このようなケースは,現在では,債務の額と担保の価格の差額は精算しなければならないと法律で規定されています)。

約束が無効になるという強い効果が認められますので,それなりにハードルは高いのですが,認められるか否かで結論が全く変わってきます。

弁護士としても戦いがいがあるケースです。

Googleマップストリートビューが仕事にとても役立つ件

2015.11.18 [ 小西 政広 ]

交通事故は,まずは現場に行くことが重要だ。と先輩の弁護士から教えられました。

その重要性は今ももちろん変わらないでしょう。現場に行って気がつくことは少なからずあります。

現場に行くか行かないかで,文章の臨場感もかわるでしょう。

もっとも,ストリートビューがあるおかげで,相談の最初の時点から,相当程度,事故のイメージが具体的になります。交通標識がどうなっているかもわかります。相談者にストリートビューを見せながら,当初から具体的かつ誤りの無い説明をしてもらうことができます。

イメージが具体的になるので,現場に行く前に,いろいろな仮説を立てられ,現場検証が一回で済むなど,効率性にかなりの効果があります。

後戻りできないですね。。。

同じ部位に同じ程度の後遺障害

2015.11.18 [ 小西 政広 ]

10年前に交通事故のむち打ち症で後遺障害等級14級と認定された方が,10年後症状はなくなっていた頃に再び交通事故に遭い,同じくむち打ち症による症状が同じ部位に残存し,それが後遺障害等級14級相当と評価できる場合,後の事故の後遺障害は,どのように評価されるのでしょうか。

一般に,後遺障害というのは,「もう治らないもの」という意味になります。
足を切断しなければならなくなった,という状況を考えるとそうなります。

しかし,むち打ち症による後遺障害については,5年程度で治る前提で,損害が計算されているのが実務です。

10年前にむち打ち症で後遺障害となった方は,その後5年程度分の損害賠償しか受けていないことになり,また,5年程度で治るものと仮定されていたのですから,その後同じ部位に同じ程度の後遺障害を負った場合に,後遺障害が残っていることを理由としてこれを評価しないのは,矛盾することになります。

後遺障害と一言にいっても,それぞれの状態の特性を踏まえた結論を出さなければならないのです。

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