2014.02.06 [ 神村 岡 ]

小学校の体育館で1年生が扉の取っ手に指を挟まれて指を切断するという痛ましい事故があり,児童と両親が市を相手に損害賠償を求める訴訟を提起したというニュースが出ていました。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140205-00000008-asahi-soci

事故にあった小学生の当時の衝撃やその後の苦労はいかばかりかと思います。

しかし,この訴訟で児童側の請求が認められるかについては,微妙なところではないかと思います。

児童側は,授業終了後に36人の児童が一斉に入り口のドアへ向かったという状況で,児童の様子を見守っていなかった講師に過失があると主張しているようです。

積極的に何かをしたことではなく,なすべき行為をしなかったことに過失があるといえるためには,今回のような事故が発生することが予測でき,それを回避するための手段を講じることができたといえることが必要です。

堺市教育委員会施設課によると,93の市立小学校の内3分の2ほどで同じタイプのドアを使っていて,これまでは今回のような事故はなかったそうです。ドアは体育館の入り口のドアですから,日常的に頻繁に使われていたことでしょう。果たして,ドアの取っ手に指が挟まれて怪我をするということを予測できたでしょうか。

私は,誰に責任があるわけでもない不幸な事故としか言えないのではないかと思います。

なお,学校での事故ですので,日本スポーツ振興センターから災害共済給付がなされ,児童は一定の補償を受けているはずです。ただ,同センターからの給付は最低限の水準ですので,児童が受けた損害の全てが金銭的に補償されるわけではありません。そのため,今回の訴訟で,児童側は同給付で補償されなかった損害について賠償を求めているものと考えられます。

それから,事故からちょうど3年が経過する頃ですので,消滅時効が完成するぎりぎりの時期です。ですので,これは完全に推測ですが,もしかすると直前まで提訴するか否かを迷われたのかもしれません。