2014.02.22 [ 神村 岡 ]
先日,「隠れ家」を売りにした店が,無断で「食べログ」に情報を掲載されて営業戦略が台無しになったとして,「食べログ」を運営するカカクコムに対して投稿の削除と330万円の損害賠償を求める訴訟を提起したというニュースがありました。
この店は看板を出しておらず,オートロックの扉を店員が開けなければ中に入れないようになっているということで,まさに「隠れ家」ですね。
しかし,食べログに掲載されてしまったことで普通の一元のお客さんが多く押し寄せるようになれば,隠れ家ではなくなってしまいます。店主の気持ちはよくわかります。
提訴については2点ほど気になる点があります。
1点目
訴える相手は投稿した本人ではだめだったのでしょうか。
確かに,投稿した本人を特定するためには,発信者情報開示請求などの手続を経る必要がありますし,個人なのでお金を持っているかどうかということもネックになります。
しかし,行為の違法性という意味では,投稿を削除しなかったサイト側よりも,投稿してしまった本人の行為の方が,より違法と評価される可能性が高いように思います。
サイト側としては,サービスを提供しているだけという側面があり,また,サイト利用者との関係で,削除するには慎重な判断を要求されますので,よっぽどの内容でなければ,削除しなかったことをもって違法とまでは評価されないように思われます。また,同じ理由で,削除請求についてもサイトに対する請求の方が認められにくいと思います。
どちらに請求するかは悩ましいところだと思います。
2点目
営業権侵害の損害はどの程度認められるのでしょうか。
売上減少による逸失利益ではなく営業権侵害が損害として主張されています。
ある程度客が押し寄せるようになり,売上が減少していなければ,逸失利益は発生していませんから,営業権侵害でいくしかないのでしょう。
損害額の算定というのは悩ましいものです。
特に,典型的な事案ではなく,相場が決まっていない場合,請求認容額の見通しを立てるのは非常に困難です。
今回の場合,「隠れ家」として営業していくという営業権が侵害されたということになります。「隠れ家」としての営業は積み上げてきた経営戦略でもありますから,一定の賠償は認められるべきだと思いますが,どの当たりが相当額なのか,いろいろと調べてみないと見当がつきません。
過去にサイトに記事の削除を求めた例では,投稿を削除する代わりに訴えを取り下げるということで事実上和解したことがあったそうですから,もしかしたら,店主の狙いはそこにあり,請求金額はあまり重要ではないのかもしれません。
それにしても,提訴したことで更に有名になってしまわないかが心配です。