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神村 岡弁護士ブログ

袴田事件

2014.03.28 [ 神村 岡 ]

昨日,袴田事件について,再審開始決定が出ました。

袴田事件とは,1966年(昭和41年)に発生した,会社専務の一家4人が殺害され放火された事件で,当時専務が勤務していた会社の従業員であった袴田氏が犯人として逮捕され,裁判では一貫して容疑を否認していたものの,有罪とされ,死刑判決を言い渡されていました。

裁判では,袴田氏の捜査中の「自白」や,裁判中に発見された作業服などが証拠とされていました。

しかし,最近になって,作業服に付着していた血痕が袴田氏のものでない可能性が高いことがDNA鑑定によって明らかになり,これが今回の再審開始決定の大きな理由になったようです。
これまでは,血液の状態が悪かったため鑑定のための十分な資料がなく,DNA鑑定ができなかったのが,科学技術の進歩によってDNA鑑定が可能になったのです。

袴田氏は,再審開始と同時に死刑と拘置の執行が停止され,釈放されました。
犯人として逮捕されてから,実に47年間以上も拘束されていたのです。しかも,死刑が確定してから数えても30年以上です。
袴田氏の心境は想像を絶します。

再審開始決定で,裁判所は,犯行時の着衣とされた証拠が捜査機関によってねつ造された可能性にも言及しています。
これが事実であるとすれば恐ろしいことですね。


ドンキホーテとAKB

2014.03.22 [ 神村 岡 ]

ドンキホーテが,AKBの運営会社と大手パチンコメーカーに対してパチンコ台の販売差止めと50億円の損害賠償請求を求める訴訟を起こしたそうです。

http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/domestic/civil_code/?id=6111028

ドンキホーテの主張は,ドンキホーテはAKBを創設期から支援していて,AKBの公式グッズの独占販売権を持っているのに,パチンコメーカーが無断でAKBのパチンコ台を作って販売しているから,その分損害を被ったというものです。

ドンキホーテとAKBが関係が深かったということ自体初めて聞きましたが,「独占販売権」に基づいてパチンコメーカーを訴えているという点がピンときません。


仮に,ドンキホーテとAKB運営会社との間で,AKBの公式グッズはドンキホーテ以外には販売させないという合意があったとしても,それはあくまでドンキホーテとAKB運営会社との間の合意に過ぎず,その合意によって第三者の行動が制限されるということは通常は考えられません。

運営会社が合意に反した場合には契約違反ということで損害賠償責任を負うとしても,第三者は関係ないということです。

例えば,特許の使用許諾の場合にも同じようなことがいえます。

特許権者が特定の人に特許発明を独占的に使用することを許可することがありますが,この場合でも,このような許可をしたことを登録(専用実施権の登録)して初めて,許可を受けた人(専用実施権者)は第三者に対して特許発明の使用差し止め請求をしたり,損害賠償請求をしたりすることができます。

例外的に,特許権者に対して無断で特許発明を使用している(特許権を侵害している)人に対しては,特許権者が侵害者に対して行使できる差し止め請求権を,独占的な許諾を受けた人が特許権者の代わりに行使することができると考える余地はありますが,これはあくまで第三者が特許権者に無断で特許発明を使用している場合です。
特許権者が,独占的な許可を与えた人との合意に反して他の人にも特許発明の使用を許可してしまった場合,特許権者自身は後から許可した人に対しては何もいえませんから,独占的な許可を得た人が特許権者の請求権を代わりに行使するということも不可能です。


ドンキホーテとAKBの事案では,独占的なグッズの販売権を与えるという合意があったのであれば,その合意に反したAKBが契約違反による損害賠償責任を負うということはわかりますが,パチンコメーカーが何か責任を負うというのはよくわかりません。

とはいえ,ドンキホーテはおそらく弁護士を代理人に立てて訴訟を起こしているでしょうから,記事だけではわからない何らかの事情があるのではないかと思います。

相当時間がかかると思われますが,訴訟の経過に関する続報を待ってみます。

実務補習が終わりました

2014.03.15 [ 神村 岡 ]

15日間にわたった中小企業診断士の実務補習が,今週の月曜で終わりました。

1企業当たり5日間ずつ,3企業で15日間でしたが,一つの企業に訪問してヒアリングをしてから報告をするまでの間に,1週間程度の中日が設けられており,その中日を使って作業を行わざるをえなかったので,なかなか大変な研修でした。

ともあれ,実務補習を終えましたので,4月から中小企業診断士として登録できることになりました。

診断士の業務は,中小企業に対する経営全般のコンサルティングです。組織のあり方,マーケティングの方法,財務面の改善など,中小企業の抱える様々な問題に対して解決策を提示します。

中小企業の中には,経営者が非常にしっかりしていて,診断士の方で改めてアドバイスできることはあまりないという企業もあります。15日間の実務補習の中でも,我々実務補習生が感心してしまうような経営をされている企業もありました。しかし,そのような企業は少数派ではないかと思います。

企業を長く続けていくのは大変なことです。企業の内部と外部で様々な環境変化が起こりますから,適切に対応し続ける必要があります。

診断士は,企業が持続的に発展していくための体制作りや,様々な環境変化への対応策をアドバイスをします。
経営について体系的に学んだことがない,自分の判断だけでは不安だという経営者の方に対しては,良き相談相手として使ってもらえる存在だと思います。
また,ベテラン経営者の方にも,普段とは違う切り口からの提案や,情報提供などでお役に立てることもあると思います。

経営相談に興味がおありの方は,法律相談のついででも構いませんので,是非お気軽にご相談ください。



従業員のミスは誰の責任?

2014.03.08 [ 神村 岡 ]

アルバイト先でお皿を割ってしまった・・・
会社の車(しかも無保険)をぶつけてしまった・・・

よくある話だと思います。

このように,従業員のミスで会社に損害を与えてしまった場合,従業員は会社に対して全額を賠償しなければならないのでしょうか。

損害を与えてしまったのだから当然弁償すべきだろうと考える方もいるかと思います。

しかし,基本的に,会社から従業員に対する請求は制限されます。

なぜかと言うと,会社は従業員を使用することで利益を上げている以上,それに伴って発生してくるリスクについては負担すべきだからです。これを,「報償責任」といいます。

個人でやっていれば利益もリスクも全部負担するはずのところを,たまたま従業員を使用しているからといってリスクだけを従業員に負わせることは許されないということです。

したがって,日常的に繰り返す業務の中で,注意をしていてもたまには発生してしまうというような事故については,従業員に責任を負わせることはできません。皿を割ったというケースはこれに当たることが多いでしょう。

他方,従業員に明らかに落ち度があるという場合には,従業員も一定の責任を負うことになります。
ただし,報償責任の観点から,会社は一部しか請求することができません。その割合はケースバイケースですが,従業員の責任はかなり制限されます。

結局,従業員が意図的に会社に損害を与えたといった例外的な場合を除いて,会社も一定の責任を負うということになります。

会社としては,ミスが発生しにくい体制づくり,各種保険への加入などによって,リスクを軽減する対策を講じておくべきでしょう。

教師の指導は適法だったか?

2014.03.01 [ 神村 岡 ]

先日,遠軽の小学生が自殺したことについて両親が町や道に損害賠償を求めた訴訟で,110万円のみの支払いを命じた1審判決を維持し,両親の控訴を棄却する判決が,札幌高等裁判所で言い渡されました。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140227/trl14022716400003-n1.htm

両親は,担任の教師の指導が厳しすぎたために小学生が死亡したと主張していましたが,1審では,教師の指導の違法性を認めず,自殺後の町の調査義務違反や報告義務違反のみを認めて,110万円の支払いを命じていました。

朝日新聞の記事では因果関係が問題となったかのような記載になっていますが,因果関係以前の指導の違法性のところが否定されています。

高裁判決の詳細はわかりませんが,1審判決の内容を見ると,裁判所は概ね町側の主張する事実関係を認定しています。そして,その事実関係を前提として,指導は厳しすぎるが違法とはいえないと評価しています。

損害賠償請求の訴訟を起こす場合,事実関係についての立証責任は原告にあります。そのため,原告が事実関係を立証しない限り,請求は認められません。

今回の件では,両親は,教師に違法と評価されうるような違法な指導があったことまで立証しなければならず,もともと難しい戦いを強いられていたといえます。

実際に違法な指導が行われていたのであれば適切な賠償がなされるべきです。
他方で,指導が多少厳しすぎたに過ぎないのであれば,やはり賠償請求が認められるべきではありません。

真相に基づいた解決がなされるのがベストですが,裁判所としては,訴訟の当事者から提出された証拠から事実を判断するしかなく,裁判所が認定した事実が真実とは限りません。ここに裁判の限界があります。

今回の判決が認定した事実関係が真実であればよいのですが・・・


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