2014.04.26 [ 神村 岡 ]
離婚した女性と子供が元夫との父子関係の取消を求めた裁判で,DNA鑑定の結果を重視して取消を認めた高等裁判所の判決が,最高裁で覆るかもしれません。
この事件では,DNA鑑定上は元夫と子供との間に血のつながりはないことが明らかになっていますから,血のつながりをもって親子だとするのであれば,高等裁判所の判決のように,父子関係は取り消すべきということになるでしょう。
しかし,民法上,婚姻中の女性が妊娠した子供は,夫の子と推定されることになっています。したがって,仮に血のつながりがなくとも,法的には夫は父親と推定されます。
もっとも,あくまで夫の子と推定されるだけですので,夫は嫡出(夫婦の間に生まれたというような意味です)否認の訴えを起こして認められれば父子関係がないことになります。
また,夫が父子関係の不存在を認めず,母や子の側が父子関係を否定したい場合には,親子関係不存在確認の訴えを提起することになります。
これが今回の訴訟です。
そして,最高裁で覆るかもしれないというのがなぜかというと,最高裁で弁論(法廷で当事者双方が主張を行うための手続きのこと)が開かれることが決まったからです。
弁論が開かれるとどうして高裁判決が覆るかもしれないのかというと,最高裁は通常,高裁判決をそのまま維持しようとする場合には弁論は開かないものだからです。弁論が開かれるということは,最高裁が高裁の判断に何らかの問題があると考えているということを意味するのです。
そして,今回についていえば,DNA鑑定で血のつながりがないことがはっきりした以上父子関係は取り消すという高裁の判断について,最高裁が問題があると考えていることになります。
それではどのような結果になるのでしょうか。
ここからは,事案の詳細を知らない上での推測になりますが,最高裁は,DNA鑑定だけで結論を出さずに,取り消すことによる不利益などをもっと調べなさいという結論を出して,審理を高裁に差し戻すのではないでしょうか。
いずれにしても,法律家にとってはかなり注目度の高い判断になります。