2014.05.03 [ 神村 岡 ]

支払督促という制度があります。

これは,金銭の支払いを求める場合などに,債務者の住所地を管轄する簡易裁判所に書面で申し立てることで,裁判所に出頭せずに支払督促(支払命令のようなもの)を出してもらうことができるという制度です。

更に,支払督促が出た後,2週間以内に債務者から異議が出なければ,裁判所は支払督促に仮執行宣言(支払督促に基づいて仮に強制執行することができる)を付すことになり,これが出ると,債権者は強制執行ができる状態になります。

ただし,債務者からの異議が出た場合には通常の訴訟手続に移行することになり,この場合債権者は債務者の住所地を管轄する裁判所に出向かなければならなくなります。

管轄裁判所のことを考えると,債務者がしっかり対応してきそうな場合には,最初から通常の訴訟を起こした方がよい場合もあるということになります(通常の訴訟であれば,基本的に債権者は自分の住所地に訴訟を起こすことができますので)。

支払督促が判決と大きく異なる点は,支払督促には判決のような既判力がないということです。

既判力とは,大まかに言うと,一度訴訟で争って結論が出た事項については,再び争うことはできないという効力です。

この既判力があることで,紛争の蒸し返しが防がれ,裁判が意味のあるものになるということができます。

支払督促には既判力がありませんから,仮に支払督促が出て,更には仮執行宣言が付されていつでも強制執行可能な状態になったとしても,債務者は債権の存在を争うことができます。

ですから,支払督促が出てから2週間が経過してしまっても,まだ強制執行がされていないうちは何とかなる場合もあるのです。