2014.05.04 [ 神村 岡 ]

5月3日が憲法記念日でしたので,憲法が保障する基本的人権に関わるニュースを紹介したいと思います。

先日,客にダンスをさせる営業を無許可でしたとして風営法違反に問われたクラブの経営者の刑事裁判で,無罪判決が言い渡されました。


記事によれば,無罪判決を言い渡した大阪地裁は,問題となったクラブの経営が風営法が定める「風俗営業」には当たらないと判断したようです。


風営法は,いくつかの営業形態を「風俗営業」と定め,その営業を行うには許可が必要だと規定しています。
風営法上の「風俗営業」には,「ナイトクラブその他設備を設けて客にダンスをさせ、かつ、客に飲食をさせる営業」という営業形態が含まれ,今回問題となったクラブはこれに当たるとして摘発されたのです。

このような風営法の規制は,営業をする自由を制限するものですから,憲法22条が保障する職業選択の自由を制限しています。また,客によるダンスという一種の表現行為をも間接的に制限しますから,憲法21条が保障する表現の自由をも制限します。

憲法が保障する自由を法律で制限するためには,目的が合理的であることや,制限が過度でないことなどが必要です。そうでなければ,法律は憲法に違反しているということになるのです。

ダンス営業を規制する風営法の規定も,それが一律にダンス営業を規制するものであれば,裁判所が憲法違反と判断することもありえたかと思います。

しかし,今回の事件では,裁判所は,風営法上の「風俗営業」は「性風俗の乱れにつながる恐れが実質的にに認められる営業に限られる」と判断し,風営法の規制対象自体を一定程度限定する解釈を示しました。

これによって,風営法が憲法違反にならないようにしたということもできます。

その上で,今回問題となったクラブの営業は,性風俗の乱れをもたらすような営業ではなく,「風俗営業」には当たらないと判断したのです。


今回は無罪という結論になりましたが,「踊らせ方」によっては「風俗営業」に当たると判断されることになります。

しかし,今回の無罪判決によって,近年クラブの取締りを不可解なほどに強化してきた警察の姿勢は改めざるをえないことになるでしょう。