2014.07.18 [ 神村 岡 ]

昨日,最高裁が,民法上の父子関係の推定をDNA鑑定で覆すことはできないという判決を出しました。

4月のブログで書いたように,DNA鑑定の結果を重視して親子関係を覆した高裁判決が取り消されるのではないかと予想されていましたが,やはり取り消されました。

今回裁判所が判断したのは3件で,1件は法律上の父親(夫)が父子関係の取消を求めた訴訟,他の2件は母親が元夫と子との父子関係が存在しないことの確認を求めた訴訟です。

最高裁が民法上の父子関係を覆すことを認めなかった理由は,子の身分についての法的安定性を重視し,いつまでも父子関係が覆る状態が続くのを防ぐという点にあります。

民法772条は,婚姻中に妻が妊娠した子は夫の子と推定すると定めていて,生物的な父親が誰かということにかかわらず,基本的にはまず夫が父親だと推定されます。
夫は,嫡出否認の訴えを起こすことでその推定の効力を争い,自分は父親ではないと主張することはできるのですが,その訴えを起こせるのは出生後1年以内と制限されています。
他方,母親や子も,子と父の親子関係が関係しないことの確認を求める訴訟を起こすことができ,これには特に期間制限はありません。

親子関係の不存在確認が認められ,父子関係の推定が覆るのは,妊娠期間中に妻と夫が完全に別居していて接触がなかったといった事情がある場合です。

民法の父子関係の推定規定は古く,法律が制定された当時はDNA鑑定などは一切想定されていませんでした。
最高裁は,DNA鑑定で推定を覆すことを否定しましたが,5人中2人は反対するなど悩みを見せており,法律を改正する必要性にも触れています。
つまり,今の民法の規定の解釈だけで妥当な解決を図っていくには限界があるので,技術の進歩などを踏まえて法律の方を変えていくべきではないかということです。

今後,父子関係についての民法の規定を改正する動きが出てくるかもしれません。