2014.07.22 [ 神村 岡 ]

今月18日に,外国人の生活保護受給権を否定する最高裁判決が出ました。

これは,外国人の憲法上の生存権(国家から生存を保障される権利)を否定するものです。

現実には,行政の通達によって,日本に居住する外国人は日本人と同様に生活保護を受給できることになっていますが,あくまで行政の判断で保護しているにとどまり,行政の方針が変わって外国人には生活保護を支給しないという判断をしても憲法には違反しないということになります。

憲法の文言上,生存権を保障されるのは日本国民であって,外国人に生活保護受給権が保障されないのは当然と思われるかもしれませんが,それほど単純な話ではありません。

現に,今回の最高裁判決の前に第2審として審理した福岡高等裁判所は,生活保護の受給権は外国人にも保障される旨の判断をしており,文言のみから答えが明確に出るわけではないのです。

今回の判決によって,少なくとも憲法上は外国人に生活保護を支給しないという判断も許容されることとなりましたが,実際に,日本に居住している外国人に対して,外国人だからという理由だけで生活保護の受給を拒否するのはやってはいけないことだと思います。

生活保護については不正受給がクローズアップされていることもあり,生活保護受給者に対する世間の風当たりは強いようですが,生活保護を受給している人の多くは,受給しなければ本当に生きていくことができないのです。

そして,同じような問題を日本に居住する外国人が経験することはあり得るのであって,そのときに,日本人ではないからどうなっても知らないという対応をするというのは人道上許されないと思います。