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神村 岡弁護士ブログ

債権法改正

2014.08.29 [ 神村 岡 ]

民法典の中の一つの大きなカテゴリーである債権法の規定が、大きく改正される見通しになりました。法制審議会で改正の最終案について合意がなされたようです。

改正は多岐にわたりますが、今日は法定利率を取り上げたいと思います。

民法では、これまでずっと、法定利率が5%と定められていました。
法定利率が5%ということは、法的に払わなければならないお金を払わなかったりした場合に、支払いが遅れた分、年5%の割合で上乗せして支払う義務が生じるということを意味します。

これは、お金があれば年間5%の割合で運用益を上げることができるという前提で、支払いを受けるのが遅れた分、得られるはずだった運用益を得られなくなったという考え方によるものです。

今、お金を運用して年5%の利益を出すのは非常に困難です。普通に銀行にお金を預けていても、ほとんど利息はつきません。年5%という法定利率は、明治時代に規定されたものがそのまま残っていたのです。

今回の改正で、法定利率は3%に引き下げられることになりました。また、市場金利を参考にして、定期的に小刻みに利率を変えることとされました。これまで明治時代から変わらなかったものが、大きく変わったなあと思います。

弁護士費用は請求できるか

2014.08.23 [ 神村 岡 ]

法律相談を受けていると,弁護士費用は紛争の相手に請求できるのかという質問をよく受けます。

こちらに何も落ち度がなく,専ら相手が紛争の原因になったという場合,その紛争のために依頼した弁護士の費用は相手に請求できてもよさそうな気がします。

しかし,基本的には,弁護士費用を相手に請求することはできず,それぞれが依頼した弁護士の費用はそれぞれが負担するというのが裁判実務です。

例外は,不法行為に基づく損害賠償請求をする場合です。不法行為は,違法な行為で被害者に損害を負わせた場合に成立します。この場合には,概ね請求金額の10%を弁護士費用として相手に請求することができます。

なぜ不法行為が成立するときにだけ,弁護士費用を相手に請求できるのでしょうか。
それは,不法行為以外の場合は,相手に弁護士費用を請求できる法的根拠がないからということだと思います。

他人にお金を請求できる法的根拠は,大まかに言って,契約の締結,不法行為の成立,親族間の扶養義務等法律で定められている,不当利得(相手が不当な利益を得て,その分こちらが損をしている場合)に分けられます。
逆に言うと,これらのいずれにも該当しない場合はお金を請求できる理由はないということになります。

そして,単に相手が契約上払うべきお金を払わないというような場合には不法行為は成立せず,他に相手に弁護士費用を請求するための法的根拠になるようなものはありませんので,相手には請求できないということになります。

他方,不法行為に基づく損害賠償請求をする場合には,不法行為が成立すること自体が相手に弁護士費用を請求できる根拠となるのです。

このような結論で果たしてよいのだろうかという疑問もありますが,一般的に弁護士費用を請求できるようにするためには,そのように法律で定める必要があると思います。

盆踊り

2014.08.15 [ 神村 岡 ]

歌と踊りが好きな息子のために,お盆休みの間に,地域の盆踊りに2回ほど顔を出しました。

それぞれ違う場所で開催されたもので,規模は違いましたが,歌と踊り,地域の町内会が主催して地域の老若男女が集まるという点,最後に参加品がもらえるという点で共通していました。

盆踊りに顔を出したのは,大通公園の盆踊りを見学したのを除くと,ほんの小さな子供の頃のことで,ほとんど記憶もありません。
小学生くらいまでは顔を出して,その後は親になるまで行かなかったという方は結構多いのではないでしょうか。

私も子供と一緒に見よう見まねで踊りました。
全く見ず知らずの人と一緒に何かをするというのが,あまり機会はないので新鮮な感覚でした。

歌と,輪になって踊る人々,夜空に浮かぶ提灯が醸し出す独特の雰囲気は,盆踊りならではだと思います。

また,盆踊りに限られるものではありませんが,地域の老若男女が参加する盆踊りというものは,地域の人々の交流の機会を提供してくれます。
特に,子供が大勢参加しますので,大人が地域の子供を一緒になって見守っていくという雰囲気が生まれるような気がしました。

良い伝統行事だなとしみじみ感じました。

「すき家」の第三者委員会報告書を読んで

2014.08.09 [ 神村 岡 ]

牛丼チェーンの「すき家」で違法な労働環境が問題になっていた件で,先日,その問題の調査をしていた第三者委員会の報告書が発表されました。


その内容を見ると,「すき家」において,サービス残業や労働基準法上の制限を大幅に超過した残業,様々な面で問題のある深夜の一人勤務など,それまでの違法な労働環境が浮き彫りになっています。

また,そのような状態に陥ってしまった原因についても言及されています。
現経営陣には,自分たちも同様に過酷な労働に耐えて「すき家」をここまで大きくしたという自負があり,それを従業員に求めることも当然許されると考えていたようです。

当然ながら,自分たちもやったことだからと違法な労働環境を押しつけて良いはずがなく,正当化は出来ないと思います。端的に,経営陣には問題意識,危機感が欠如していたといえます。

しかし,「すき家」が第三者委員会を設置して外部の目で徹底的に労働環境を調査してもらい,違法な労働実態を改善していく覚悟を示したこと自体は,評価されるべきことだろうと思います。
第三者委員会の調査を受け,その報告書を公にしたことで,「すき家」は労働環境に関する膿を全て出し切り,正常な経営に向けて舵をきったといえるでしょう。

第三者委員会が行った従業員に対するアンケートでは,会社に対する厳しい声だけではなく,会社を思う声も数多くよせられたということです。
このような従業員こそが会社の財産であるという報告書の一節には,正にそのとおりだなと思いました。

氷泥棒

2014.08.02 [ 神村 岡 ]

先日,スーパーの保冷用の氷を買い物もしていないのに大量に持ち去ろうとした人が,窃盗罪で逮捕されたというニュースが流れていました。

ただで使えるものとは言っても,スーパーに置いてある氷は買い物客が買った食品を保冷するために提供されているものであって,何も買っていない人が持ち去ることは予定されていません。

そのため,買い物もしていないのに氷を持ち去るのは窃盗罪に当たります。窃盗罪に当たるかどうかはともかく,まずいことだというのは常識的に考えればなんとなくわかりますよね。

もっとも,持ち去った量が少量だったり,店長から制止されてやめていれば,逮捕までされることはなかったと思います。やりすぎだったということですね。

逮捕後,その男が「窃盗だとは思っていない」と弁解していたそうですが,今頃はさすがに後悔しているのではないでしょうか。

どうせ無料だから問題ないだろうということで同じようなことをしている人は,程度の差こそあれ,全国に数多くいると思います。

今回の逮捕は,そういう意味でかなりインパクトのあるものだったのではないでしょうか。

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