2014.08.23 [ 神村 岡 ]

法律相談を受けていると,弁護士費用は紛争の相手に請求できるのかという質問をよく受けます。

こちらに何も落ち度がなく,専ら相手が紛争の原因になったという場合,その紛争のために依頼した弁護士の費用は相手に請求できてもよさそうな気がします。

しかし,基本的には,弁護士費用を相手に請求することはできず,それぞれが依頼した弁護士の費用はそれぞれが負担するというのが裁判実務です。

例外は,不法行為に基づく損害賠償請求をする場合です。不法行為は,違法な行為で被害者に損害を負わせた場合に成立します。この場合には,概ね請求金額の10%を弁護士費用として相手に請求することができます。

なぜ不法行為が成立するときにだけ,弁護士費用を相手に請求できるのでしょうか。
それは,不法行為以外の場合は,相手に弁護士費用を請求できる法的根拠がないからということだと思います。

他人にお金を請求できる法的根拠は,大まかに言って,契約の締結,不法行為の成立,親族間の扶養義務等法律で定められている,不当利得(相手が不当な利益を得て,その分こちらが損をしている場合)に分けられます。
逆に言うと,これらのいずれにも該当しない場合はお金を請求できる理由はないということになります。

そして,単に相手が契約上払うべきお金を払わないというような場合には不法行為は成立せず,他に相手に弁護士費用を請求するための法的根拠になるようなものはありませんので,相手には請求できないということになります。

他方,不法行為に基づく損害賠償請求をする場合には,不法行為が成立すること自体が相手に弁護士費用を請求できる根拠となるのです。

このような結論で果たしてよいのだろうかという疑問もありますが,一般的に弁護士費用を請求できるようにするためには,そのように法律で定める必要があると思います。