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神村 岡弁護士ブログ

落とし物を拾ったが・・・

2014.09.26 [ 神村 岡 ]

落とし物を拾った場合,まずは警察に届けますよね。
そのまま自分のものにしてしまうと遺失物横領罪という犯罪が成立してしまいます。

ところで,警察に届けた後持ち主が現れた場合,拾った人にはいくらかお金が支払われることになっています。

これは,遺失物法28条に以下のとおり規定されています。

(報労金)
第28条
 物件(誤って占有した他人の物を除く。)の返還を受ける遺失者は、当該物件の価格(第9条第1項若しくは第2項又は第20条第1項若しくは第2項の規定により売却された物件にあっては、当該売却による代金の額)の100分の5以上100分の20以下に相当する額の報労金を拾得者に支払わなければならない。

つまり,拾ったものの価格の5%から20%を報労金として持ち主に請求できるのです。

それでは,持ち主がケチで,支払わなかったらどうなるのでしょうか。

拾った人には報労金を請求できる権利がありますので,法的手続によって請求していくこともできます。
しかし,法的手続をとるためには持ち主の名前,住所等の情報を知っておく必要があります。

実は先日,遺失物の報労金に関する相談を受けたのですが,持ち主の名前と電話番号だけ警察から聞いていて,持ち主と電話連絡がとれなくなってしまったが,住所を警察に聞いても個人情報だといって教えてくれないとのことでした。

私見としては,正当な権利行使のために必要な情報を警察しか持っていないのですから,警察は教えるべきだと思います。個人情報の保護は理由にならないと思います。

しかし,警察が拒否した場合に情報を聞き出すことは相当困難と思われますし,費用もかかることになると思います。また,電話番号から住所を調べることも可能な場合もありますが,これも費用がかかってしまいます。

ですから,取りっぱぐれを防ぐためには,持ち主が現れた時点でちゃんと住所も聞いておいた方が良さそうです。

海外進出支援

2014.09.20 [ 神村 岡 ]

弁護士会が主催する,中小企業の海外進出支援の研修会に参加してきました。

中小企業の海外進出支援については,ジェトロや経済産業省など様々な機関が情報提供やビジネスマッチング,計画作りの支援などを行っています。情報提供という意味では,ジェトロのホームページなどは非常に充実しています。
そういった状況で,弁護士が中小企業の海外進出に対してどのような支援をすることができるのかというのが一つのテーマでした。

弁護士として支援しがいのある局面は,やはり海外の企業と契約書を取り交わす際の内容のチェックでしょう。ジェトロなどの支援機関の支援は充実しているものの,契約に伴う法的リスクの回避,除去といった面では,やはり弁護士の出番になります。

海外進出と言うと,現地に法人を立ち上げるという大がかりなものを想像してしまいがちですが,海外への製品の輸出なども立派な海外進出と言えます。
今日の研修会では,展示会経由で海外向けに商品を輸出する際の落とし穴についての話もありました。

どういう話かというと,海外の業者向けの製品展示会で,海外の業者に興味を持ってもらって輸出を始めることができたが,間もなく,当該外国の他の業者から,「あなたの会社の商標は既に他の会社が登録していて,このままではまずいので私がなんとかしましょう」というような案内が来て,最終的に商標を登録している会社に結構な金額の解決金を,案内を出してきた業者に相応の報酬を支払うことになるというものです。

もちろん,案内を出してきた業者と商標を登録していた会社はグルです。展示会に来た会社ももしかしたらグルかもしれません。
このようなケースが,海外の業者向けの展示会をきっかけに商品を輸出し始める場合にはよくあるそうなのです。
これに対処するためには,輸出を開始する前に自分で商標を取ってしまうというような対策が必要になってきます。

海外進出は,うまくやれば新たな市場を開拓することのできる魅力的な方法ですが,上の例に限らずリスクはつきものです。
リスクを事前に洗い出しておく作業は欠かせないでしょう。

消滅時効

2014.09.13 [ 神村 岡 ]

民法には,消滅時効というルールがあります。

これは,お金を請求することのできる権利(債権)は,請求が可能になったときから一定期間請求しなかった場合は,請求することができなくなってしまうというものです。

なぜこのようなルールがあるかというと,権利の行使がいつまでも許されるとすると,債務者がいつまでも不安定な状態におかれる上に,長期間の経過によって証拠がなくなってしまうことが多いというようなことが理由です。

消滅時効が成立するための期間は,基本的には10年間ですが,債権の種類によってより短い期間で消滅時効が成立することになっています。

例えば,不法行為による損害賠償請求権は3年間,労働者(ごく短期の契約の場合は除く)の給与請求権は2年間,旅館や飲食店の代金は1年間といった具合です。

このように,短期間で成立する消滅時効に関しては種類毎に細かく期間定められていたのですが,これが民法の債権法分野の改正により5年に統一される見込みとなりました。

かなりすっきりしますね。

そういえば,これまで残業代の請求は上記のとおり2年間の消滅時効にかかっていたのですが,これが5年間まで延長されると,かなりインパクトは大きいです。

残業代をしっかり支払っていない会社は,5年分の残業代を一度に請求されることになり,場合によっては相当な金額になります。このような可能性を考えると,使用者にとっては,普段から残業代をしっかり計算して支給するのはリスク管理としてとても重要だと思います。

職務発明

2014.09.06 [ 神村 岡 ]

職務発明とは,会社の従業員が会社の業務として何らかの発明をすることを意味します。

このような場合,今の特許法では,基本的には特許権者はその発明をした従業員で,会社がその発明に対する相当な対価を従業員に支払った場合にのみ会社が特許権を得ることができます。この相当な対価がいくらなのかということに関しては,数多くの裁判例が存在します。

ところで,この職務発明の制度が根本的に変わってしまうかもしれません。


つい先日,政府は,職務発明を無条件で会社のものとする方針を示しました。これまでのルールから180度方針転換することになります。

これは,従業員に低くはない対価を支払わなければいけない現状に異を唱えた経済界の意向をくんだものですが,一方で従業員の発明に対するモチベーションが下がりますし,優秀な研究者が海外に流出してしまう自体にもなり得ます。

結局は国としての競争力の低下につながる可能性が高いように思いますので,私は反対です。



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