2014.10.18 [ 神村 岡 ]

先日,日弁連が主催した下請法の研修会に参加しました。

下請法というのは,発注する側の会社(親事業者)と下請け側の会社(下請事業者)の関係を規律する法律で,一般的に下請事業者は親事業者との関係で交渉力が弱く不利な地位に置かれることが多いため,不利益を受けやすい下請事業者を保護するための法律です。

主な内容は以下のようなものです。

まず,親事業者の義務として,
①契約の内容などを示した書面を下請事業者に交付・保管すること
②下請事業者への代金の支払い期限を定めること(支払期限は物品等を受領する日から60日以内)
などが定められています。

また,親事業者への禁止事項として,
①物品等の受領拒否
②代金の支払い遅滞
③代金の減額
④返品
⑤親事業者の商品等の購入の強要
⑥親事業者の不当な行為を公正取引委員会等に告げたことに対する報復措置
などが禁止されています。

公正取引委員会は,親事業者がこの法律の規定に違反した場合,違反の状態を解消するように是正勧告をすることができる他,従わない場合には課徴金を課すこともできます。また,刑事罰としての罰金もあります。

このように,下請事業者を保護するための法律が整備されているのですが,この法律に反するような行為は後を絶ちません。
公正取引委員会への報告に対する報復措置が禁止されているとしても,将来的に発注を打ち切られてしまうリスクを考えると,下請事業者はなかなか強気に出られないということもあるかもしれません。

実は,下請法のような法律が定められているのは日本だけなのだそうです。
他の国では親事業者が好き放題しているのかというとそうではなくて,他の国では日本ほど下請事業者が不利な地位には置かれていないため,法律を定める必要もないのです。

日本で下請事業者が不利な地位に置かれているのは,同じ親事業者から長期間にわたって受注する企業が多いこと,全受注の中で特定の親事業者からの受注が占める割合がとても高いことなどが原因になっているようです。

親事業者との関係で不利な立場におかれることを考えると,受注先を増やすとか,一定期間ごとに取引を見直すといった工夫が下請事業者には求められると思いますが,新規開拓が難しい傾向が日本にはあるとか,一定のシェア以上の取引を親事業者から求められるとか,いろいろと障害もありそうです。

そうすると,提供する商品やサービスの質を向上させ,差別化を図り,替えのきかないものを提供していくということが,結局は下請事業者が自己防衛をするための一番の近道かもしれません。