2014.12.06 [ 神村 岡 ]

訴訟を起こすと,訴状は裁判所を通じて被告に送達されます。

このとき,通常は,被告が実際に訴状を受領して初めて送達の効力が生じます。

しかし,被告の居場所がわからない場合はどうすればよいのでしょうか。

このようなときに用いられるのが公示送達です。

公示送達は,裁判所の掲示板に,裁判所が書類を保管していていつでも受け取れる状態にある旨を掲示するだけで行うことができ,掲示して2週間を経過すると相手方が書類を受け取ったのと同じように扱われます。

訴える側からすれば非常にありがたい制度ですが,ほぼ間違いなく被告は裁判所の掲示板など見ることはないため,被告の知らないところで手続が進んでしまいます。

そのような重大な効果のある公示送達ですから,認められるためにはそれなりに厳しい条件が必要です。

住民票上の住所や,その他住んでいそうなところがあれば実際に住んでいないかどうかの確認をする必要がありますし(調査会社にお願いするケースが多いです),職場がわかればそちらに送ることができるので,職場がわからないということも公示送達が認められるための要件です。つまり,手を尽くしてもどこにいるかわからないと説明できて初めて,公示送達は認められるのです。

先日,会社を相手にする訴訟で公示送達が認められましたが,登記簿上の本店所在地や支店所在地の居住調査のほか,同場所にあるマンションの管理会社への聴取りをしても情報が得られないこと,実際に郵便物を送ってみてもとどかないこと,会社代表者の所在もつかめないことなどを証明しました。

このように,なかなかハードルは高いのですが,本当に相手の所在がわからない場合には有効な制度です。
相手の所在がわからないということだけで法的手続をあきらめる必要はないということは,頭の片隅に入れておいて損はないと思います。