2015.02.18 [ 神村 岡 ]

先日,札幌駅にほど近い繁華街で,看板が落下して通行人の女性に当たり,大けがを負わせてしまうという事故が発生しました。女性はまだ意識不明の重体とのことです。


看板は85年に設置されたもので,設置以来,目視による点検しかしていなかったようです。

この看板は,建築基準法上,年に1回,目視か打音などで以上の有無を確認することが義務づけられていました。看板を設置していた店は,業者に依頼して目視による点検を行っていたということですから,建築基準法の安全確認の規定には違反していなかったということにはなるのかもしれません(地上から15メートル上の看板を本当にちゃんと目視できたのか,検査になっていたのかという点は気になります)。

しかし,看板を設置・管理していた業者は,建築基準法上の規制とは別に,民法717条により,その看板が落下するなどして他人に危害を与えたことについて賠償責任を負います。建築基準法上の規制に従っていたから良いというものではないのです。

もっとも,十分な注意を払っていたにもかかわらず事故が起こってしまったのであれば,賃借人などその看板を単に管理していただけである者は責任を免れる場合がありますが,その場合はその看板の所有者が賠償責任を負うことになります。

では,看板を保守点検する業者に対して,高所での打音による確認なども行うことができる十分な費用を支払っていて,その業者がしっかり仕事をしていれば事故が防げたという場合はどうでしょうか。

この場合でも,看板の所有者が被害者に対する責任を免れることはありませんが,保守点検を委託していた業者に対して求償(自分が賠償した分について支払を求めること)することができる可能性があります。


今回の事故は,おそらく経年劣化によるものでしょう。
このような事故が発生してしまう前に何とかならなかったのかと思えてなりません。