2015.02.20 [ 神村 岡 ]

企業の活動には様々なリスクが伴います。

企業活動によって人に怪我をさせてしまった場合,あるいは死亡させてしまった場合には,民事上の損害賠償責任が発生する場合があるほか,業務上過失致死傷罪(刑法211条)にも該当し,代表者や従業員が刑事責任を問われることがあります。

業務上過失致死傷罪は,業務上必要な注意を怠って,人を死傷させた場合に成立します。

法定刑は,5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金です。

「業務上」が付かない単純な過失致死罪は50万円以下の罰金,過失致傷罪は30万円以下の罰金又は科料ですから,「業務上」が付くことでかなり刑が加重されているといえます。

以前は,自動車を運転して人を死傷させてしまった場合も業務上過失致死傷罪の対象になっていましたが,2007年の改正以降は自動車運転過失致死傷罪が新設され,自動車事故の場合はそちらが適用されることとなっています。

なお,業務上過失致死傷罪は,代表者や従業員に適用されるもので,会社が処罰の対象となることはありません。

渋谷の温泉施設で起きたガス爆発事故や,JR福知山線の脱線事故でも,刑事責任を問われたのは役員などであって,法人ではありません。

会社の活動によって人を死傷させた場合に会社が責任を負わないのはおかしいという意見もあるかと思いますが,刑法は個人のみを刑事責任の対象にしています。

他方,従業員が過失で人を死傷させてしまって損害賠償責任を負う場合,民法715条の使用者責任により,会社も民事上の損害賠償責任を負います。
従業員が損害賠償責任を負う場合でも,会社が注意を怠っていなければ責任を負わないという例外規定はありますが,その例外規定が適用されるハードルはかなり高く,ほとんど適用されることはありません。