2015.03.13 [ 神村 岡 ]

労働が原因となって労働者が死亡した場合、その遺族には労災から遺族年金が支払われます。

また、労働環境に問題があった場合など、労働者が死亡したことについて使用者に過失がある場合には、遺族は使用者に対して損害賠償請求をすることができます。

そして、労災から遺族年金の支給があった場合、使用者側はその限度で賠償義務を免れます。

ところで、損害賠償請求をする場合、本来の損害賠償額(元本)に加えて、支払いが遅れたことに対する遅延損害金も請求することができます。労災事故の場合、元本に対して年5%の割合です。

それでは、賠償額から遺族年金の既払い額を差し引く場合、遅延損害金からまず差し引いて、残った分を元本から差し引くのでしょうか。それとも、まず元本から差し引くのでしょうか。いずれの処理をするかによって、遅延損害金の金額が変わってきます。

この点については、従来裁判所の判断も分かれていたのですが、先日、最高裁が従来の判例を変更して,元本から差し引くという判断を示しました。

http://mainichi.jp/select/news/20150305k0000m040048000c.html

その結果、遅延損害金は元本から遺族年金の支給額を差し引いた金額を基準に計算されますので、遺族にとっては不利な結果ということができます。

最高裁の判断の根拠は,死亡による労災保険給付と死亡による逸失利益(死亡した人の収入など,得られるはずだった利益)の損害賠償が、いずれも人の死によって失われた利益を補填するという点で同性質であること,かつ相互に補完する関係にあるという点
にあります。

遺族補償年金は将来にわたって定期的に支給されるものですが,実際に支給された限度で,不法行為のときに損害が填補されたと法的に評価することになります。

従来の判例を変更するもので,実務的には大きなインパクトのある判例です。