2015.04.10 [ 神村 岡 ]

今日,最高裁が興味深い判決を出しました。

小学生である子どもが他人に怪我を負わせたり,死なせたりしてしまった場合,その子ども自身は責任を負いません。責任を負わせる前提である判断能力がないからです。

その場合,民法714条により,その親が賠償責任を負うことになります。子どもをしっかり監督しなかったことについて親にも責任があると考えられるからです。

もっとも,同条但し書きにより,親が子どもに対する監督を怠らなかったときには親も責任を負わないのですが,どの程度しつけをしていれば「監督を怠らなかった」といえるのかについては,はっきりした基準はなく,難しい問題です。
これまでの裁判実務では,被害者救済という観点から,親の責任を広く認め,なかなか「監督を怠らなかった」とは認めてきませんでした。

今日の最高裁判決は,親は子どもに対する監督を怠らなかったと判断しました。

事案は,小学校の校庭で小学生が蹴ったボールが道路に出て,バイクに乗っていた高齢者が転倒・骨折し,入院中に亡くなってしまったというものです。

小学生はサッカーゴールに向かってボールを蹴ったのですが,その後ろにある校庭と道路の間の門の高さが1.3メートルで,ボールがその門を飛び越えて道路に出てしまったようです。

1審と2審は,道路にボールが出てしまう可能性のあるような位置にサッカーゴールがある以上,そのゴールに向かってボールを蹴らないように指導する義務が親にはあったと認定し,両親の責任を認めました。

しかし,最高裁は,ボールが道路に出てしまったのはたまたまであって,そのサッカーゴールに向けてボールを蹴ることは,通常は人に危害を及ぼすような行為ではないと認定しました。
そして,そのような場合,具体的に危険性を予見できていたというような事情がない限り,一般的なしつけをしていた両親は監督義務を怠ったとはいえないと判断しました。

今回の最高裁の判断は,とても常識的な判断ではないかと思います。
これまで,責任を負わない子どもに対する親の監督義務については,被害者救済という観点からかなり広く認められてきて,親が監督を怠らなかったと主張・立証するのはほとんど不可能に近いような状況でしたが,今後はそのような裁判実務の傾向が変わっていくかもしれません。