2015.05.30 [ 神村 岡 ]

先日,枕営業をしたクラブのママに対する,男性の妻からの損害賠償請求が棄却された判決があったというニュースが流れていました。

なかなか衝撃的な判決で,だからこそニュースになったのでしょう。

不貞行為は離婚原因にもなっていて,不貞行為があれば基本的には離婚が認められ,離婚が認められる場合には不貞相手に対する慰謝料請求も認められます。

それでは不貞行為とは何なのでしょうか。

冒頭の判決は,枕営業を売春と同視し,「何ら結婚生活の平穏を害するものではな」いとして,妻からの損害賠償請求を棄却しました。

しかし,判例では,不貞行為の意義について,「配偶者ある者が,自由な意思にもとづいて,配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと」をいうと判断されています。

この基準によれば,売春であろうとホステスとの性交渉であろうと,やはり不貞行為に該当することになります。

もっとも,民法上,不貞行為等の離婚事由があっても,「一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるとき」には,夫婦の一方からの離婚請求は認められないこととなっています。

ですから,ホステスと性的関係を持っても,回数などの事情を考慮すれば離婚までは認められないという結論はあり得ます。

しかし,慰謝料についてはどうでしょうか。
配偶者が自分以外の異性と性的関係をもった場合に,そのことについての慰謝料が認められないというのは少し常識的な感覚から離れているような気がします。

まして,冒頭の判決の事案では優良顧客とクラブのママとの性的関係であって,継続的に関係をもっているのです。

判決の内容からすると,商売が絡んだら一切慰謝料を認めないという基準で裁判官が考えているように思えます。それは少し行き過ぎでしょう。