2015.06.26 [ 神村 岡 ]

支払督促とは,通常の裁判手続を行わずに,簡易な手続で強制執行(給与,預金の差し押さえなど)を可能にする制度です。

債権者が支払督促の手続を申立てると,裁判所は債務者に対して支払督促の書類を送ります。

これに対して債務者が異議を申し立てれば,自動的に通常の訴訟手続で処理されることになりますが,債務者が何も対応しないでいると,債権者は支払督促に基づいて強制執行をすることができるようになります。

それでは,法律で定められた期間内に異議を申し立てなかった場合,支払督促を覆す手段はもうないのでしょうか。

実は,争う手段は残されています。

民事訴訟法上,仮執行宣言付の支払督促が確定した場合には確定判決と同じ効力を有すると規定されていますが,確定判決の内容を後になって争うことができないのに対して(これを,既判力といいます),支払督促の場合は既判力がないとされているので,請求異議訴訟という手続で争うことが可能です。この点で確定判決と確定した支払督促とは異なるといえます。

また,仮執行宣言付の支払督促が確定すると,いつ強制執行をされてもおかしくない状態になるのですが,請求異議訴訟の手続には時間がかかります。そこで,請求異議訴訟の結果が出る間での間,とりあえず支払督促の効力を停止させておくための手続も用意されています。

手続としては少々面倒ですが,実際に強制執行が行われるまでは諦める必要はないのです。

ただし,当然のことながら,支払督促の内容となっている債務について争いようがない場合には,上記のような手続を経たところで支払義務を免れることはできません。

その場合には,債権者に対して分割弁済の申し入れをするなどして,強制執行がされないように働きかけるべきでしょう。