トップページ > 弁護士BLOG > 神村 岡弁護士 > 神村 岡: 2015年11月

神村 岡弁護士ブログ

TPPと著作権

2015.11.28 [ 神村 岡 ]

先日,TPPが大筋合意に至りましたが,これによって著作権法の分野でも大きな変化があると言われています。

改正が予定されているのは以下の3点です。

①著作者死後の保護期間の延長(50年→70年)

②懲罰的賠償制度の創設

③著作権侵害に対する刑罰の非親告罪化


①は,著作者の死後どれくらい,著作者の権利が保護されるかという問題です。
現状では基本的に50年なのですが,それが70年になりそうということです。

②著作権者が実際に被った損害だけでなく,加害者に対する懲罰的な意味合いで,それ以上の損害賠償を認めるという制度です。
アメリカでは,この懲罰的賠償制度は著作権に限らず一般的ですが,日本では一切採用されていません。ですから,それなりにインパクトのある改正といえます。

③親告罪というのは,被害者の告訴がなければ刑事事件として立件できない犯罪のことです。
現在では,著作権の侵害はこの親告罪に当たりますが,非親告罪化するというのは,親告罪でなくしようということです。
ただし,非親告罪化する範囲にはかなり限定があり,「商業的規模の侵害」に限られ,かつ,「原作等の市場での収益性に大きな影響を与えない場合は除外」するとされています。
ですから,これらに該当しない一般的な小規模な侵害行為は,依然として親告罪にとどまるということになりそうですので,普通の人にとってはあまり影響は大きくないでしょう。

公序良俗違反

2015.11.21 [ 神村 岡 ]

民法の法律行為の章の最初の条文,民法90条に,「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。」と規定されています。

法律家の間では,「公の秩序又は善良の風俗」を略して公序良俗と言われます。
条文の内容を言い換えると,社会的妥当性を欠く契約は効力を認めないということです。

基本的に,何か約束事(契約)をしたら守らなければなりません。法律上の義務にもなります。
その例外の一つが公序良俗違反で,公序良俗に反する約束をしても法律上は無効です。

例えば,何らかの犯罪行為を犯す対価として報酬を与えるという内容の契約をしたとしても,社会的妥当性がありませんので,無効とされます。

また,例えば500万円のお金を貸す際に,3000万円の不動産を担保にして,期限までに支払えなかったらその不動産を債務弁済の代わりに譲り受けるという契約をしたとします。これも,相手の弱い立場を利用して暴利を得ようとするもので,公序良俗違反に当たります(このようなケースは,現在では,債務の額と担保の価格の差額は精算しなければならないと法律で規定されています)。

約束が無効になるという強い効果が認められますので,それなりにハードルは高いのですが,認められるか否かで結論が全く変わってきます。

弁護士としても戦いがいがあるケースです。

警察官が飲酒運転

2015.11.13 [ 神村 岡 ]

先日,砂川市で警察官が飲酒運転をしたというニュースが流れていました。

砂川市と言えば,若者グループが飲酒運転をして交差点で事故を起こし,衝突した車に乗っていた一家が死傷するという事件があったのが記憶に新しいです。

そして,正に飲酒運転を撲滅しようと市を挙げて取り組んでいるところで,寄りにも寄って警察官が飲酒運転をしてしまったということで,ニュースを聞いたときは唖然としました。

ただ,ニュースを詳しく見てみると,警官が飲酒したのは前日夜から当日の未明にかけてで,朝出金するときにお酒が抜けきらないまま車を運転してしまったということのようです。

だからと言って許されるわけではありませんが,お酒を飲んだ直後に運転してしまったというケースに比べれば,悪質性は低いのではないでしょうか。
お酒を飲んだ翌朝となると,アルコールが体に残っていることを認識していたかどうかということも問題になってきます。自分が酒気帯び状態だという認識がなければ,故意がないため犯罪にならないからです。先日も,那覇地裁で,前日夜に飲んだお酒が残っていて酒気帯び運転に問われた被告人の裁判で,故意が認定できないため無罪という判決が出たばかりです。

とはいえ,アルコールが残った状態で運転することはそれ自体危険な行為で,認識していなくて犯罪にならなければよいというものではありません。

一晩寝れば大丈夫だろうと思って油断して運転してしまう人は少なからずいるのではないかと思いますが,気をつけないといけませんね。

医療問題弁護団・研究会全国交流集会

2015.11.07 [ 神村 岡 ]

私は札幌の医療事故問題研究会に所属しています。
同研究会では,医療問題について会員同士の研修を行ったり,共同で医療事件を受任して対応したりしています。

実は,似たような団体は全国各地にあり,毎年1回どこかの会の主催で研修及び懇親を目的とした交流会が開かれています。
そして,今年は大阪で交流会が開かれており,私も昨日から参加しています。

私は交流会に参加するのは今年が初めてでしたので,各地の弁護団・研究会の活動の様子も初めて知ることができました。

昨日の研修では,電子カルテを病院で証拠保全する際の注意点などの話を聞くことができました。
印刷された電子カルテは必ずしもパソコンのディスプレイ上に表示される情報と一致するとは限らないといった話です。
私も証拠保全は何度かやりましたが,いろいろ気をつけなければいけないことがあると再認識させられました。

今日は現役の裁判官が医療訴訟における因果関係をテーマに講演をしてくれることになっています。

 | 1 | 

ページ上部へ