2016.07.29 [ 神村 岡 ]

障害者施設の入所者が襲われ,19人もの方が亡くなるという大変痛ましい事件が起こりました。

犯人は,事件の前には「障害者は生きていてもしょうがない」という発言もしており,それがきっかけで措置入院をさせられていました。
措置入院というのは,精神疾患が原因で自分自身や他人に害を与えるおそれがあると判断されるときに,強制的に入院させる制度です。
尿検査で大麻の陽性反応が出たということでしたので,その点が措置入院の判断に当たって重視されたのかもしれませんが,いずれにしても,精神的に異常な状態にあると判断されていたことになります。
犯人は「神からのお告げ」があったという話をしており,妄想もあったのかもしれません。

犯行時に精神的に異常な状態だったということになると,刑事裁判では,責任能力の有無が問題になってきます。

しかし,何らかの異常があったというだけで無罪になったり,減刑されるわけではありません。
今回の事件では,犯人は事前に周到に計画を立て,それを冷静に実行しているように思います。
また,長時間をかけて数十人の入所者を死傷させており,犯意は固かったと考えられますし,その犯意は以前からあったようですので,妄想等による一時的なものというわけでもないと思います。

ですから,現時点で伝わってくる情報から考えると,責任能力がなかったあるいは限定されていたという主張は通らないように思います。

それにしても,どのようにして,このような残虐な行為を正当化するような考え方を持つに至ったのでしょうか。
裁判ではできる限りこの点を解明して欲しいと思っています。