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神村 岡弁護士ブログ

あいまいな処罰規定

2015.07.11 [ 神村 岡 ]

罪刑法定主義というものがあります。
これは,予め法律で定められた規定によらずに刑罰を受けることはないという趣旨です。

また,何が刑罰に当たるのかが明確でなければならないという原則も,罪刑法定主義から導かれます。
処罰を定める規定があいまいだと,結局何をしたら罰せられるのかがよくわからず,不当に自由を制限することになりますし,思いがけずに処罰を受けるということにもなりかねません。そのため,刑罰法規は明確であることが求められるのです。

自民党が,選挙権の年齢が18歳に引き上げられることに関連して,高等学校の教員に政治的な中立性を徹底させ,政治的行為の制限に違反した教員に罰則を科すことを提言したようです。

まだ具体的な法案の作成には至っていませんが,政治的な中立性に違反した行動に対して罰則を科すということは,何が中立なのかという大きな問題を孕んでいます。

もちろん,教員が政治的に偏った内容の授業をすることは問題です。議論のあるテーマについては,様々な意見を紹介する必要があるでしょう。

しかし,「中立」を逸脱した行為に罰則を設けてしまうと,教師が処罰を恐れて萎縮し,窮屈でつまらない授業になりはしないでしょうか。
しかも,時の権力が「中立」の解釈をし始めると,権力による教育のコントロールという危ない方向に行ってしまいます。

今回の自民党の提言が具体化しないことを祈るばかりです。

育休とったら退園

2015.07.04 [ 神村 岡 ]

埼玉県所沢市で,下の子供について育休をとったら,保育園に通っている2歳以下の上の子供がいれば退園させなければならないというルールが定められ,それによって実際に退園となった子の親達が市を提訴したというニュースがありました。

所沢市のホームページでも,そのルールがアナウンスされています。

子供にとって,保育園は生活の一部ですから,そこに通えなくなるというのは重大なことだと思います。

他方で,保育園が足りず待機児童が数多くいるという状況があるのであれば,必要な家庭が保育園を利用できるようにするためにはやむを得ない面があると思います。育休をとっている間は,子供の面倒を見ること自体はできるのですから,保育園に預けなければ生活費を稼いでいくことができないという方に譲るべきというのは,そのとおりかなと思います。

ただ,本来は,必要な保育園の数・定員を確保すべきであって,育休をとった場合に退園させるというのはできれば避けるべきでしょう。

この問題に関して,市長が,子供はお母さんと一緒にいたいはずだという発言をしたそうですが,それは価値観の押しつけであって,反発をうけても仕方ないでしょう。
待機児童解消のためのやむを得ない措置だというスタンスが一貫されていれば,展開は少し違っていたかもしれません。

支払督促を放置したら?

2015.06.26 [ 神村 岡 ]

支払督促とは,通常の裁判手続を行わずに,簡易な手続で強制執行(給与,預金の差し押さえなど)を可能にする制度です。

債権者が支払督促の手続を申立てると,裁判所は債務者に対して支払督促の書類を送ります。

これに対して債務者が異議を申し立てれば,自動的に通常の訴訟手続で処理されることになりますが,債務者が何も対応しないでいると,債権者は支払督促に基づいて強制執行をすることができるようになります。

それでは,法律で定められた期間内に異議を申し立てなかった場合,支払督促を覆す手段はもうないのでしょうか。

実は,争う手段は残されています。

民事訴訟法上,仮執行宣言付の支払督促が確定した場合には確定判決と同じ効力を有すると規定されていますが,確定判決の内容を後になって争うことができないのに対して(これを,既判力といいます),支払督促の場合は既判力がないとされているので,請求異議訴訟という手続で争うことが可能です。この点で確定判決と確定した支払督促とは異なるといえます。

また,仮執行宣言付の支払督促が確定すると,いつ強制執行をされてもおかしくない状態になるのですが,請求異議訴訟の手続には時間がかかります。そこで,請求異議訴訟の結果が出る間での間,とりあえず支払督促の効力を停止させておくための手続も用意されています。

手続としては少々面倒ですが,実際に強制執行が行われるまでは諦める必要はないのです。

ただし,当然のことながら,支払督促の内容となっている債務について争いようがない場合には,上記のような手続を経たところで支払義務を免れることはできません。

その場合には,債権者に対して分割弁済の申し入れをするなどして,強制執行がされないように働きかけるべきでしょう。

倫太郎

2015.06.20 [ 神村 岡 ]

先日,Dr.倫太郎が最終回を迎えました。
普段あまりドラマは見ないのですが,倫太郎は録画しながらこつこつ見ていました。

倫太郎は,患者にとことん寄り添い,共感することで治療していく精神科医です。

弁護士にも精神科医と同様カウンセリング的な要素があります。
トラブルを抱えた相談者は,話を聞いてもらうだけで肩の荷が下りるということはよくあります。

私も,できるだけ相談者,依頼者の話は良く聞くようにしています。

弁護士ですから,見通しなどについてときには厳しいことも言わなければなりませんが,それも話を良く聞いてからでなければ納得してもらいにくいでしょう。

倫太郎と違って,ときにはなかなか共感できないこともありますが,良く聞いて共感するという基本を大事にしていきたいものです。

自転車のルール②

2015.06.13 [ 神村 岡 ]

2013年12月から,自転車は道路の左側を通行しなければならないこととなっています。

また,原則として車道の左側を通ることになっています。

もっとも,例外的に歩道を走ってもよい場合があります。

それは,

①道路標識等で自転車が歩道を通ることが認められている場合
 歩道に自転車のマークが書かれていることがよくありますが,この例外に当たります。

②車道又は交通の状況からやむを得ないと認められるとき
 車の交通量が多いのに車道の路側帯が狭く,安全に車道を走ることができないときはこれに当たるでしょう。

③運転者が13歳未満の子供,70歳以上の高齢者,体が不自由な人の場合

です。

この例外に当たる場合でも,歩道を安全に走行できないときなどは,降りて通行する必要があります。

私は日常的に自転車に乗っていますが,②に当たりそうなケースが結構あります。
危ない場合には無理に車道を走らなければならないわけではないのです。

自転車のルール

2015.06.06 [ 神村 岡 ]

6月1日に改正道路交通法が施行されましたが,それによって,自転車を運転する際のルール違反に対する罰則が厳しくなりました。

どのように厳しくなったかというと,一定の危険な運転行為を3年以内に2回行うと,講習を受講しなければならないということになりました。講習の受講にはお金がかかりますし,受講しないと5万円の罰金が科されます。

改正法の施行に合わせて,最近自転車の運転について取締が強化されているようですので,具体的に何が違反なのか改めて調べてみました。

例えば,イヤホンで音楽を聴きながら自転車を運転してもよいでしょうか。

このような細かいルールは都道府県毎の規則に委ねられていますが,北海道の場合,以下のように定められています。

高音でカーラジオ等を聴き、又はイヤホン若しくはヘッドホンを使用して音楽を聴く など安全な運転に必要な交通に関する音又は声が聞こえないような状態で、車両を運転 しないこと。 」

これによると,イヤホンやヘッドホンを使用して音楽を聴く行為が,安全な運転に必要な音が聞こえない状態の一例として挙げられています。

しかし,この規定だけからは,イヤホン等を使用することが直ちに違反になるのか,それともイヤホン等を使用したことで必要な音が聞こえない状態になって初めて違反になるのか,よくわかりません。

いずれにしても,イヤホンで音楽などを聴いていれば周りの音が聞こえづらくなるはずです。安全のことを考えると,自転車の運転中はイヤホンを使わないのが無難でしょう。

枕営業と不貞行為

2015.05.30 [ 神村 岡 ]

先日,枕営業をしたクラブのママに対する,男性の妻からの損害賠償請求が棄却された判決があったというニュースが流れていました。

なかなか衝撃的な判決で,だからこそニュースになったのでしょう。

不貞行為は離婚原因にもなっていて,不貞行為があれば基本的には離婚が認められ,離婚が認められる場合には不貞相手に対する慰謝料請求も認められます。

それでは不貞行為とは何なのでしょうか。

冒頭の判決は,枕営業を売春と同視し,「何ら結婚生活の平穏を害するものではな」いとして,妻からの損害賠償請求を棄却しました。

しかし,判例では,不貞行為の意義について,「配偶者ある者が,自由な意思にもとづいて,配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと」をいうと判断されています。

この基準によれば,売春であろうとホステスとの性交渉であろうと,やはり不貞行為に該当することになります。

もっとも,民法上,不貞行為等の離婚事由があっても,「一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるとき」には,夫婦の一方からの離婚請求は認められないこととなっています。

ですから,ホステスと性的関係を持っても,回数などの事情を考慮すれば離婚までは認められないという結論はあり得ます。

しかし,慰謝料についてはどうでしょうか。
配偶者が自分以外の異性と性的関係をもった場合に,そのことについての慰謝料が認められないというのは少し常識的な感覚から離れているような気がします。

まして,冒頭の判決の事案では優良顧客とクラブのママとの性的関係であって,継続的に関係をもっているのです。

判決の内容からすると,商売が絡んだら一切慰謝料を認めないという基準で裁判官が考えているように思えます。それは少し行き過ぎでしょう。

ストレスチェック

2015.05.23 [ 神村 岡 ]

今年の12月から,従業員にストレスチェックを受けさせることが事業者の義務になります。

当面は,従業員50名以下の事業者に関しては努力義務とのことですが,このような制度が設けられた背景には,様々な要因で心の病を抱えてしまう労働者が多いということがあるでしょう。

ストレスチェックは,ストレスの度合いを判断しうるような調査表を用いて行われ,主に産業医が担当することが想定されているようです。また,実施義務を年に1回とすることが予定されているようですから,健康診断と合わせて行われることになるでしょうか。

調査表には,標準的な調査表として国が推奨するものがあります(職業性ストレス簡易調査表)。

従業員が記入した調査表は事業者は見ることはなく,ストレスチェックの実施者に提出され,その結果によっては,医師による面談が必要と判断されることになります。その場合,従業員から医師との面談の申し出があれば,事業者は面談を受けさせなければなりません。

ストレスチェックが上手く機能すれば,従業員が心の病を抱えるのを未然に防ぐことができるほか,事業所の労働環境についても必要に応じて見直すきっかけとなるでしょう。

事業承継と遺留分

2015.05.16 [ 神村 岡 ]

今日,診断協会の実践的企業再生研究会で,事業承継と遺留分,相続税をテーマに発表をさせていただきました。

テーマは企業再生からは外れていますが,そこは気にしないでください。

事業承継にもいろいろありますが,後継者に経営権を承継させるのに相続を伴う場合,どうしても遺留分の問題が発生してきます。

遺留分とは,生前贈与や遺言によっても奪うことのできない相続人の最低限の権利です。子どもや配偶者が相続人にいる場合,遺留分は法定相続分の2分の1です。

先代経営者が後継者となる長男に対して,生前贈与と遺言によって一定割合以上の財産を長男に渡した場合,他の相続人は遺留分を侵害されたことになり,その侵害された分を支払うように長男に請求することができます。

ですから,家族の仲が良ければよいのですが,そうでもない場合,先代経営者が後継者となる長男に会社株式等や個人名義の会社資産の全ての会社財産を渡したいと考えたとしても,うまくはいかないケースも出てくるのです。

後継者が会社株式や事業用資産を十分に相続できないという事態を避けるためにとり得る方法はいろいろとあります。いずれにしても事前に対策を講じておくことが大切です。

モエレ沼公園

2015.05.09 [ 神村 岡 ]

札幌市東区に,イサム・ノグチという建築家が設計したモエレ沼公園というかなり大きな公園があります。

広大な敷地内にいろいろな見所があり,休日を過ごすにはいいところです。

これまで何度か訪れたことがありましたが,連休中にまた行ってきました。

公園の目玉の一つが「海の噴水」という噴水です。
ただ水が上がるだけの噴水ではなく,荒れた海の波の様子を水の動きで再現するという少し変わった噴水です。高さも最大で25メートルになりますので,かなり見応えはあります。

常時水が噴き出しているわけではなく,決められた時間になるとプログラムにしたがって水が噴き出してきます。

先日は風の強い日で,そのためかわかりませんが,プログラムが始まる前に,風下で見ていると水がかかることがあるので注意してくださいというようなアナウンスが流れていました。

水しぶきが飛んでくるくらいのイメージで受け止めていたのですが,いざプログラムが始まって水が高く噴き上がると,風が強く吹いた瞬間,噴き上がった水が襲いかかるように風下の噴水の外に落ちていきました。当然,風下側で見ていた人たちは揃って慌てて逃げていきました。

ずぶ濡れになってしまった人には申し訳ないですが,なかなか面白い光景でした。

なお,アナウンスはありましたから,水がかかって電子機器が壊れたとしても,札幌市に弁償を求めることは難しいでしょう。

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