2015.07.11 [ 神村 岡 ]
罪刑法定主義というものがあります。
これは,予め法律で定められた規定によらずに刑罰を受けることはないという趣旨です。
また,何が刑罰に当たるのかが明確でなければならないという原則も,罪刑法定主義から導かれます。
処罰を定める規定があいまいだと,結局何をしたら罰せられるのかがよくわからず,不当に自由を制限することになりますし,思いがけずに処罰を受けるということにもなりかねません。そのため,刑罰法規は明確であることが求められるのです。
自民党が,選挙権の年齢が18歳に引き上げられることに関連して,高等学校の教員に政治的な中立性を徹底させ,政治的行為の制限に違反した教員に罰則を科すことを提言したようです。
まだ具体的な法案の作成には至っていませんが,政治的な中立性に違反した行動に対して罰則を科すということは,何が中立なのかという大きな問題を孕んでいます。
もちろん,教員が政治的に偏った内容の授業をすることは問題です。議論のあるテーマについては,様々な意見を紹介する必要があるでしょう。
しかし,「中立」を逸脱した行為に罰則を設けてしまうと,教師が処罰を恐れて萎縮し,窮屈でつまらない授業になりはしないでしょうか。
しかも,時の権力が「中立」の解釈をし始めると,権力による教育のコントロールという危ない方向に行ってしまいます。
今回の自民党の提言が具体化しないことを祈るばかりです。