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神村 岡弁護士ブログ

診断士登録1年

2015.05.02 [ 神村 岡 ]

昨年4月に中小企業診断士に登録し,翌月には中小企業診断士の集まりである中小企業診断協会北海道に入会しましたので,今でちょうど1年ほどになります。

そのような時期ですが,先日診断協会の新入会員歓迎会が開かれ,新入会員として出席してきました。

1年たった時点で新入会員として歓迎していただくというのも変な話ですが,診断協会への入会が5月だったため,昨年4月に開催された歓迎会には間に合わなかったのです。

歓迎会に出席するに当たり,診断士と弁護士と両方の知識,経験を活かせる分野は何かということを改めて考えてみました。

分かり易いところでいえば,中小企業の事業再生の分野,事業承継の分野が挙げられると思います。

事業再生については,傾きかけた企業の中味を改善するのは診断士の仕事ですが,特定調停や民事再生などの活用が必要になれば,弁護士の出番になります。

事業承継については,いかに後継者を育てて代表者交替を成功させるかということを考えるのは診断士の仕事ですが,遺留分などの問題をクリアしていかに円滑に手続を進めるかということを考えるのは弁護士の仕事です。

診断士に関してはまだまだ認知度が低いのが現状ですが,診断協会を挙げて,よりよいサービスを提供できるように日々研鑽を積んでいます。

私も,そんな診断士の先輩方に混じって勉強を続けていくつもりです。

免震ゴム問題

2015.04.25 [ 神村 岡 ]

基準に満たない性能の免震ゴムが出荷され建築に使用されていたことが,大きな社会問題になっています。

性能不足の免震ゴムの出荷は96年からで,それを使用して建てられた建物は100棟近くということですから,その影響は甚大です。

メーカーによれば,基準に満たない免震ゴムは全て交換する方針とのことですが,100棟にも及ぶ建物の基礎部分に用いられるであろう免震ゴムを交換するには,相当な費用がかかるでしょう。

メーカーには,基準を満たした製品を納期までに納めなければならないというプレッシャーがあったのでしょうか。しかし,影響の大きさを考えれば,超えてはいけない一線だったと思います。

少し法的に分析してみると,メーカーは直接免震ゴムを出荷した業者に対しては,債務不履行責任を負いますので,基準を満たした免震ゴムを提供する債務を負います。

他方で,メーカーは自治体等の建築工事の発注者との間では直接の契約はしていないでしょうから,契約に基づく責任である債務不履行責任ではなく,不法行為責任を負うことになります。その内容は,基準を満たす製品を提供するという履行責任ではなく,基準に満たない製品が使用されたことによって発注者が被った損害を金銭的に賠償する責任です。

交換の対応をする場合,基準を満たした製品を施工業者等に提供し,交換工事に要する費用を負担し,工事期間中に建物の所有者が被る不利益を補償するということになると思います。

以上のようなメーカーの責任は,施工から長期間経過している建物に関しては,消滅時効によって債務が消滅している可能性もあります。

しかし,社会的責任,信用などを考えれば,今後事業を継続していくのであれば,基準を満たす製品と交換するという対応を取らざるを得ないでしょう。

新しいタイプの商標

2015.04.18 [ 神村 岡 ]

商標法の改正により,4月1日から,これまでなかったタイプの商標登録が認められるようになりました。

具体的には,
①動き,②ホログラム(見る角度によって絵が変わるもの),③色彩,④音,⑤位置
の商標が新しく加わりました。

これまでの商標法では,文字,図形,記号,立体形状に限られていましたので,商標の活用の幅が広がる画期的な改正です。

具体的なイメージがわきづらいかもしれませんが,例えば色彩に関して言えば,トンボの消しゴムの青,黒,白の3色の組み合わせなどはそれに該当します。
音について言うと,企業のCMで短いメロディーが必ず流れることがありますが,そういったものが音の商標に該当すると思います。
なお,単色の色彩などは基本的に商品識別力がない(他の商品と区別して認識されるような機能をもたない)ため,基本的には商標登録もできないとされています。

トンボの3色カラーもそうですが,今回新しく商標に加わった類型は,これまでも事実上その企業のその商品を表すものとして使用されてきました。

今回の改正によって,それを法的な権利として登録することができるようになったのですが,他方で,これまで使用してきた色彩や音が,他の企業によって商標登録されてしまうということもあり得ます。
その場合には,他社による商標登録前から使用していたのであれば継続して使用することができますので,自ら商標登録をしないのであれば,使っていたといえるように証拠を残しておくことが必要になってきます。

サッカーボール訴訟

2015.04.10 [ 神村 岡 ]

今日,最高裁が興味深い判決を出しました。

小学生である子どもが他人に怪我を負わせたり,死なせたりしてしまった場合,その子ども自身は責任を負いません。責任を負わせる前提である判断能力がないからです。

その場合,民法714条により,その親が賠償責任を負うことになります。子どもをしっかり監督しなかったことについて親にも責任があると考えられるからです。

もっとも,同条但し書きにより,親が子どもに対する監督を怠らなかったときには親も責任を負わないのですが,どの程度しつけをしていれば「監督を怠らなかった」といえるのかについては,はっきりした基準はなく,難しい問題です。
これまでの裁判実務では,被害者救済という観点から,親の責任を広く認め,なかなか「監督を怠らなかった」とは認めてきませんでした。

今日の最高裁判決は,親は子どもに対する監督を怠らなかったと判断しました。

事案は,小学校の校庭で小学生が蹴ったボールが道路に出て,バイクに乗っていた高齢者が転倒・骨折し,入院中に亡くなってしまったというものです。

小学生はサッカーゴールに向かってボールを蹴ったのですが,その後ろにある校庭と道路の間の門の高さが1.3メートルで,ボールがその門を飛び越えて道路に出てしまったようです。

1審と2審は,道路にボールが出てしまう可能性のあるような位置にサッカーゴールがある以上,そのゴールに向かってボールを蹴らないように指導する義務が親にはあったと認定し,両親の責任を認めました。

しかし,最高裁は,ボールが道路に出てしまったのはたまたまであって,そのサッカーゴールに向けてボールを蹴ることは,通常は人に危害を及ぼすような行為ではないと認定しました。
そして,そのような場合,具体的に危険性を予見できていたというような事情がない限り,一般的なしつけをしていた両親は監督義務を怠ったとはいえないと判断しました。

今回の最高裁の判断は,とても常識的な判断ではないかと思います。
これまで,責任を負わない子どもに対する親の監督義務については,被害者救済という観点からかなり広く認められてきて,親が監督を怠らなかったと主張・立証するのはほとんど不可能に近いような状況でしたが,今後はそのような裁判実務の傾向が変わっていくかもしれません。

新年度ですね

2015.04.04 [ 神村 岡 ]

新年度が始まりましたね。

新年度の始まりといえば,学生時代は卒業・進学やクラス替えなど大きく環境が変わる節目の時期でしたが,弁護士になって以降は,年度が変わったからといって何が変わるわけでもありません。

今週1週間を振り返っても,裁判官の転勤等で裁判の期日がないことを除けば普段とあまり変わらない1週間でした。

もっとも,個人的には,4月1日で年齢が一つ上がることもあり,節目の時期ではあります。少し立ち止まって色々なことを考えるのには良い機会です。

また,長男が幼稚園に入園したりと,プライベートでは色々と変化があります。

少し前ではありますが,雪が溶けて自転車が乗れるようになるのもこの時期です。
9年前に札幌に来たときから乗っている自転車はぼろが目立ち,先日子どもの自転車を買うついでにサドルやハンドルのグリップなどのパーツを購入してきました。
サドルはねじがさびついていて,今のところ交換できていませんが・・・

何はともあれ,公私ともに気持ちを新たに頑張っていきたいと思っています。

ファウルボール訴訟

2015.03.27 [ 神村 岡 ]

昨日,札幌地裁で,ファイターズの試合を観戦中にファウルボールが当たって右目を失明した女性が起こした訴訟で,女性が怪我をしたことについて球団側の責任を認め,損害賠償を命じる判決が出ました。


まだ判決文を読めていないので詳細はわかりませんが,この裁判の争点は,ファウルボールによる負傷を防ぐための球団側の対策が十分だったか否かという点でしょう。

私もファイターズの試合を観戦したことはありますが,ファールボールが飛ぶと大きなサイレンがなり,「ファウルボールの行方にご注意ください」というアナウンスが流れます。

ファウルボールが飛んだ後以外にも何らかのアナウンスはあったように思いますが,いずれにしても,現状のアナウンスだけでは安全対策は不十分だったと認定されたことになります。

確かに,実際にファウルボールは飛んできますし,中にはライナー性の打球もあります。全ての打球の行方をしっかり見ることは実際には難しいので,ファウルボールが当たる危険性を完全に排除しようとすれば,防護ネットなどが必要になると思います。

他方で,観客はファウルボールの危険性を認識しながら観戦しているはずですから,ある程度観客の側で自己防衛をすべきという考え方もあり得ると思います。
つまり,危険な状況を認識しつつ自らその状況に身を置いた以上は,本人にもその危険から身を守る責任があるのではないかということです。
このような理屈を「危険の引受け」といいます。

もし,ファウルボールが飛んで来ないようにしなければ球団側が責任を免れないとすると,結局は広い範囲で防護ネットなどを張らざるをえないことになりますが,個人的には,それはちょっと残念です。

もちろん,今回のような事故が起こらないよう,安全対策については見直される必要があると思いますが,アナウンスを工夫するなど,何とか安全性と臨場感を両立させるような方法がないものでしょうか。

有給消化の義務付け

2015.03.21 [ 神村 岡 ]

これまで,有給休暇は労働者が申請して初めて認められるものでした。

そのため,有給を取得する権利はあるものの,何となく行使しづらいという理由で結局使わないまま終わってしまうというのはよくある話だったと思います。

そのような状況を打開することを目的としているのでしょうか,今,労働者に有給休暇を取得させることを企業の義務とすることが検討されています。

具体的には,有給休暇の内5日間程度の日数については,企業の方から積極的に労働者に働きかけて取得させるという制度になりそうです。

違反した場合の罰則も設けられるのでしょう。

これによって,労働者がいろいろな事情で全く有給休暇を取得できないという状況は改善されそうです。

とはいえ,業務量が変わらなければ,他の日の残業が増えるだけということにもなりかねません。

これを機に,業務を効率よく短時間で終わらせるような工夫ができればよいですね。

マタハラ

2015.03.15 [ 神村 岡 ]

マタハラとはマタニティーハラスメントのことで,妊娠・出産を機に嫌がらせをしたり,退職に追い込んだりすることを意味します。

妊娠・出産を機に降格や退職を迫られるというケースは少なくないのではないでしょうか。

男女雇用機会均等法や育児介護休業法は,妊娠・出産を理由として解雇や降格などの不利な取扱をすることを禁止しています。

しかし,実際には妊娠・出産を理由としていても,勤務成績や勤務態度の不良といった他の理由をつけて不利な処分をされてしまうということは多々あると思います。

そのような場合,妊娠・出産を理由とした降格や解雇であることを立証することはなかなか困難です。

しかし,先日,厚労省が全国の労働局宛の通達を出し,妊娠・出産に近接した時期における降格・解雇などの不利益な処分は,妊娠・出産を理由としたものとみなして原則違法と判断するという基準を示しました。

これによって,企業側が勤務成績不良等の名目でマタハラを行うことが抑止されるようになると思います。

労災遺族年金と損害賠償

2015.03.13 [ 神村 岡 ]

労働が原因となって労働者が死亡した場合、その遺族には労災から遺族年金が支払われます。

また、労働環境に問題があった場合など、労働者が死亡したことについて使用者に過失がある場合には、遺族は使用者に対して損害賠償請求をすることができます。

そして、労災から遺族年金の支給があった場合、使用者側はその限度で賠償義務を免れます。

ところで、損害賠償請求をする場合、本来の損害賠償額(元本)に加えて、支払いが遅れたことに対する遅延損害金も請求することができます。労災事故の場合、元本に対して年5%の割合です。

それでは、賠償額から遺族年金の既払い額を差し引く場合、遅延損害金からまず差し引いて、残った分を元本から差し引くのでしょうか。それとも、まず元本から差し引くのでしょうか。いずれの処理をするかによって、遅延損害金の金額が変わってきます。

この点については、従来裁判所の判断も分かれていたのですが、先日、最高裁が従来の判例を変更して,元本から差し引くという判断を示しました。

http://mainichi.jp/select/news/20150305k0000m040048000c.html

その結果、遅延損害金は元本から遺族年金の支給額を差し引いた金額を基準に計算されますので、遺族にとっては不利な結果ということができます。

最高裁の判断の根拠は,死亡による労災保険給付と死亡による逸失利益(死亡した人の収入など,得られるはずだった利益)の損害賠償が、いずれも人の死によって失われた利益を補填するという点で同性質であること,かつ相互に補完する関係にあるという点
にあります。

遺族補償年金は将来にわたって定期的に支給されるものですが,実際に支給された限度で,不法行為のときに損害が填補されたと法的に評価することになります。

従来の判例を変更するもので,実務的には大きなインパクトのある判例です。

美濃加茂市長の無罪判決

2015.03.07 [ 神村 岡 ]

先日,収賄で起訴されていた美濃加茂市長の裁判で,無罪判決が言い渡されました。

日本の刑事裁判では,検察が有罪と判断して起訴すると,ほとんど有罪になります。
起訴される裁判のほとんどは事実関係に争いのない自白事件ですから,その点は割り引いて考える必要はありますが,刑事裁判で犯罪事実を争って無罪判決を勝ち取ることができるのは,かなり稀なケースといえます。

ところで,今回の美濃加茂市長の収賄疑惑に関しては,贈賄の容疑をかけられた人物も起訴され,既に懲役刑が確定しています。

美濃加茂市長が無罪ということは,収賄の事実がなかったということですから,贈賄もなかったということになるはずです。なぜ,同じ事件なのに結論が別れたのでしょうか。

これには,刑事手続のルールが関係しています。

今回,美濃加茂市長の裁判と,贈賄で起訴された人物の裁判とは別の手続で行われたため,審理は別々にされています。

そして,裁判官が判決を出すに当たって判断材料とする証拠は,その裁判で調べられたものに限られます。
2つの裁判では調べられた証拠は異なっていたでしょうから,裁判官が判断材料としたものが違うということになりますし,他方の事件の結論を考慮することも許されません。

また,なにより被告人が認めているのか否認しているのかという点が違います。
贈賄側の裁判では,被告人自身が贈賄の事実を認めていましたから,検察側が一応の証拠を揃えれば裁判官は有罪の結論を出さざるを得ず,無罪判決が出る余地はほぼなかったと考えられます。
それに対して,美濃加茂市長は争っていましたから,供述の信用性等が厳しく審理されることになります。美濃加茂市長の裁判で大きかったのも,贈賄側の人物の供述が信用できないと判断されたことでした。

それにしても,美濃加茂市長の無罪判決が正しいとすると,贈賄側の虚偽の証言のせいで美濃加茂市長は逮捕され,刑事裁判を戦わざるを得なかったことになります。
そうだとすると,その虚偽の証言は贈賄行為よりも罪深いように思います。

今回の判決では,贈賄側の人物が,美濃加茂市長に対する贈賄について重要な証人となることで,自らの他の重大な詐欺事件を有利に運ぼうとしたという疑いがあるという指摘がされています。

虚偽の贈賄の事実を供述する動機がある人物の供述を信用して,それを立証の柱として美濃加茂市長を起訴した検察の判断が正しかったのか,疑問が残ります。

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