2015.06.02 [ 小西 政広 ]

交通事故によって怪我をして,それによって精神的苦痛を蒙ったということについては,加害者に慰謝料を請求することができます。

この慰謝料は,現在の実務上,基本的には,入院をどのくらいの期間したか,通院をどのくらいの期間したか,によって定められます。

諸外国では慰謝料の基準などないという国もあるようです。

このように基準が定められると,同じような怪我の人に対しては,同じ程度の金額を算定することができ,裁判所が,個々のケース間で公平に振る舞えるという利点があります。

しかし,実際にどの程度怪我が重たかったか,などの,入通院期間以外の事由がなかなか考慮されづらいという側面があります。

どれだけ怪我が重くても,仕事が忙しくてなかなか通院できないといった状況だと,慰謝料が極めて軽く見積もられてしまうおそれが高くなります。

本来,「怪我をした」ことに対する精神的苦痛のはずなのに,裁判の場では,「通院の苦労」に対する精神的苦痛であるかのような主張をされることがあり,基準を入通院期間で定めてしまった弊害が現れていると感じます。

怪我が重いのに特に通院期間が短くなったり通院回数が少ないというケースについては,弁護士の腕の見せ所でもあるといえるでしょう。