2015.11.23 [ 小西 政広 ]

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151120/k10010314161000.html

最高裁は,遺言者が,遺言書の全体に斜線を引いたら,遺言者自身が故意にその遺言書を破棄したものと取り扱うとして,遺言書を無効にすると判断しました。

この事例では,遺言者自身が遺言書に斜線を引いたという事実が争われていなかったようですが,斜線である以上,遺言者でない相続人がそれを行うことも容易でしょう。

自分に都合の悪い,封印されていない自筆の遺言書をたまたま発見した相続人が,定規でまっすぐ線を引いてしまうようなことも想定はできます。

もっとも,斜線を引いたのが誰か分からないというような事案であれば,今回の判例と同じ結論にはもちろんなりません。

しかし,遺言者としてはそのようなことをされては折角遺言書を残した意味がありません。紛争は必ず起きてしまいます。

いずれにしても,自筆での遺言は,結局相続人間の紛争を防ぐ力が余りありません。その有効性を巡って裁判となりやすいからです。遺言書を残す以上,より紛争可能性が少ない公正証書とすべきです。