2012.04.16 [ 齋藤 健太郎 ]

医療事件では,ちゃんとした治療をしていたかどうかが最も争われます。
しかし,治療が間違っていたとしても,すぐに勝てるわけではありません。
適切な治療をしていれば,助かったといえなければ,基本的には負けてしまいます。

医療事故を扱う弁護士は,いつもこの壁にぶつかっています。
人体という大変複雑なものを扱っている以上,仮定の話をしても,よくわからないことが必ず出てきます。
また,そもそも検査をすべきなのにしていない事案などでは,検査をしていないせいで,原因がはっきりわからないことも多いです。
やるべきことをやっていない医師の方が,最終的に救われるという何とも落ち着きの悪い結論となるのです。

「そんなもんやるべき検査していなんだから,負けてもしょうがないじゃないか!」という裁判官がいればいいのですが,そうは簡単ではありません。
問題のある治療をしたのだから,一定の慰謝料を認めるという方法もあるのですが,それも納得いく金額とはならないことが多いのが現状です。