2013.12.16 [ 齋藤 健太郎 ]

ジャックバウアーと聞いて,ピンと来る方は最近では少なくなってしまったでしょうか。
日本でも放映されていた,あの人気ドラマ「24」の主人公です。
ものまね芸人が日本語吹き替え版の真似をしていたので,そのイメージが強いかもしれませんね。

なんでジャックバウアーが特定秘密保護法と絡むのか・・・。
関係ないといえば関係ないのですが,いつもこの法律の話を聞くとあのドラマが頭をよぎるのです。
ジャックバウアーは,どのシリーズでも多数の国民の命や大統領の命など,「絶対に守らなければならないもの」というものを命を賭けて守るむちゃくちゃ強い男です。
次々に展開するストーリーに引き込まれてしまうため,視聴者の睡眠時間を削ってしまう恐ろしいドラマです。

しかし,冷静に観ていると,このドラマの捜査官達の人権意識は極めて低い。
バウアー捜査官の所属するテロ対策ユニット(CTU)では,拷問による取り調べが平気で行われていますし,ジャックバウアーも躊躇なく相手を殺害し,汚い手で脅 して自白させる。あるときは子供の命を奪うと脅し,あるときは足に銃弾を容赦なく撃ち込む。CTUにおいては,なぜかあらゆる情報が徹底的に収集されており,プライバシーなんて ものは無視されています。
「時間が無い!やるしかない!」

でも,視聴者は決してバウアーもCTUも嫌いになりません。なぜなら,バウアーは本当は優しい男であり,国を守るため,人命を守るために必死にやっているのですから。テロを防ぐためには仕方ないのですから。
そこにあるのは,守るべきものが大きければ何であっても許されるという発想です。

ところが,最終シーズンでは,バウアーは国のためというのを超えて,自分の復讐,自分の考える正義のために行動し始めます。CTUの言うことも完全に無視し,大統領の言うことも聞きません。ただの反逆者。
正直,全く共感できないままラストへ。

現在の政府は,自分達の愛国心にすっかり陶酔しているのではないでしょうか。
我々は,正しいことをやっている。国を守るためにはこれしかない,などと考えているのかもしれません。
しかし,特定秘密保護法は歯止めが聞かない危険な法律であることは明らかです。それが暴走し,民主主義が根底から否定されることになれば,不利益を被るのは間違いなく我々国民です。
勇ましくみえる行動が,実際にはただ国をダメにするだけだということに早く気がついて欲しいものです。