2014.03.31 [ 齋藤 健太郎 ]
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2014.03.31 [ 齋藤 健太郎 ]
2014.03.30 [ 齋藤 健太郎 ]
2014.03.23 [ 齋藤 健太郎 ]
2014.03.23 [ 齋藤 健太郎 ]
かなりニュースでも話題になったので知っている方もいるかもしれませんが,昨年の11月に,とても興味深い判決がありました。
60年前に病院で取り違えられた赤ちゃんが,相当な期間経った後にDNA鑑定によって真実を知り,病院相手に損害賠償請求をしたという事件で,裁判所は,病院に3800万円の損害賠償を命じました。
果たして,なぜ3800万円だったのか,「生まれる家庭が違う」ということがどのように慰謝料を生じさせるのか・・・ということが気になっていたのですが,ようやく最近,判決文を読む事ができました。
3000万円が本人の慰謝料,200万円がすでに亡くなった両親の慰謝料の相続をした分ということのようです。
この事件のポイントは,以下の点にあります。
1 本当は裕福な家庭に産まれたはずだったが,原告が育てられた家庭は生活保護を受給しており,経済的理由から,原告は進学を断念して中卒で働き,収入も低かった。
2 実の弟3人と自分と取り違えられた男性も皆大学に進学していました。
ここで問題となるのは,もっと稼ぐことができたのに稼げなかったということを,経済的な損失として請求できるかどうかです。
現実の問題としては,教育にはお金がかかります。
大学に行くための費用も当然必要ですが,その間働かなくても良い環境にいなくてはなりません。また,それ以外にも子供の頃からの教育費用も必要となるでしょう。
そういう観点からは,「もっとお金を稼ぐことができた可能性が高い」ということが認められる余地はあったといえるでしょう。東大生の半数以上は年収950万円以上の家庭という統計もあるようです。
一方で,もし取り違えがなかったら,どんな人生を送ったかは誰にもわかりません。もしかしたら,それでも中卒だったかもしれないし,進学しても遊び人になってテニスサークルでテニス三昧だったかもしれない。取り違えがなければ,「高収入を得られた」可能性が高かったとまで言い切れるでしょうか?
この点について判決はこのように述べて,請求を認めませんでした。
「家庭環境だけで,中卒又は高卒で終わるのか,大学への進学及び卒業が可能になるかが必然的に決まってしまうわけではなく,本人の能力,意欲,関心の所在等によって,大学進学の機会が与えられながらあえて大学進学という進路を選ばず,若しくは入試の失敗により進学を断念し,又は大学への進学を果たしたものの卒業に至らずに終わるといった例も決して少なくない。しかも,原告X1が18歳であった昭和46年当時の大学進学率は昨今のように高いものではなく,現在の感覚以上に大学への進学は容易なことではなかったと考えられ,また,本件取り違えから大学進学時まで最短で18年,卒業まで最短で22年という長期間(しかも人の人生において最も多感な時期)があり,出生後間もなくの時点をもって,その間に生じ得る状況の変化を見通すことは困難である。そうすると,本件取り違えがなかったとしても,原告X1が大学卒業の学歴を得ることができたかどうかは,必ずしも明らかでない」
18〜22歳までが人生において最も多感な時期であるという判決理由はなかなか面白いものがありますが,要するにグレていたかもしれないということでしょう。
そのように記載しつつ,判決は以下のようにも述べています。
「もっとも、本人の意欲さえあれば大学での高等教育を受けることが十分可能な家庭環境が与えられるはずであったのに、経済的な理由から中学卒業と同時に町工場に働きに出ることを余儀なくされ、およそ大学進学など望めないような家庭環境に身を置かざるを得なかったことが本件取り違えによって生じた重大な不利益である」
高等教育を受ける「チャンス」を得られなかったという意味では慰謝料にとどまるのは適切な判断だと思います。しかし,生まれや育ちによって人生の幸福度に差がないはずだという考えを突き詰めれば,その点については慰謝料を認めないという結論もあったかもしれません(本当の親と過ごせなかったという点は別でしょうが)。しかし現実は違いますし,彼の無念さを無視することはできなかったのでしょう。
2014.03.22 [ 齋藤 健太郎 ]
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2014.03.18 [ 齋藤 健太郎 ]
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2014.03.17 [ 齋藤 健太郎 ]
2014.03.11 [ 齋藤 健太郎 ]
最近,主婦が誤認逮捕されたというニュースがありました。
その件は,パチンコ店で女性客が、他の客の財布を置き引きしたとして逮捕された事件でした。
その後,財布が店内から発見されたため,見つかった場所を撮影した別の防犯カメラの映像を調べたところ、別人が財布を捨てる姿が映っていたというのです。女性は,8日間勾留された後にようやく釈放されたのでした。
警察が女性を逮捕したのは,防犯カメラの映像に,財布を盗られた男性が座っていた席に女性が座り、財布があった方向に手を伸ばすような様子が映っていたという理由からでした。しかし,この事件では,女性は一貫して容疑を否認していたのですから,別の防犯カメラも当然に調べるべきだったでしょう。警察も,「別のカメラの映像は確認しておらず、捜査が尽くされていなかった」として,女性に対して謝罪せざるを得ませんでした。
さて,8日間の身柄拘束がなされたことに対して,どのような補償がなされるのでしょうか。
まず,刑事補償法という法律がありますが,この法律では,最終的に無罪判決まで取らなければ補償を受けることができません。おかしな話ですが,憲法でも,「無罪の判決を受けたときは」とされているため,刑事裁判になる前に釈放された場合は含まれないのです。
そこで,起訴前に釈放された場合については,法律ではないのですが「刑事補償規程」というものがあり,それに基づいて補償がなされることがあります。しかし,全ての場合にされるわけではなく,たとえば単に証拠が足りないという理由などで釈放された場合は含まれていませんし,検察官が判断することになっています。今回の事件のようにはっきりと犯人ではないという証拠があった事案はいいのですが,そうではない場合には補償は受けられない可能性が高いでしょう。
それにしてもこの事件、もしも、財布が店内で見つからず、別の防犯カメラの映像チェックがなされなかったらどうなっていたのでしょうか。
世界的には異常な数字ですが、日本では、起訴されると99.9%が有罪になります。この事件も、私のような優秀な刑事弁護人が就任しなければ,有罪になっていた可能性も否定できません。本当に恐ろしい話ですが,自分は関係ないと思ってはいけません!この事件の女性がただパチンコをしていただけであるように,誰にでも犯人にされてしまう可能性はあるのです・・・。
実は誤認逮捕の問題として,ニュースやメディアに実名報道されてしまうという点もあります。一旦、実名報道がされてしまうと、今はインターネット上にも記事や記事を引用したものが残ってしまいますので,仮に、あとで誤認逮捕とわかっても、取り返しがつかないことになります。また,地方の人口の少ない地域で暮らしているような場合には,一度の報道によってその人の生活は破壊されてしまいます。
警察も検察も,今回の事件のような,はっきりとした証拠がなければ,謝罪をすることもありませんし,「犯人ではありませんでした」なんて報道がされることもありません。一度報道された以上,犯人ではないかという疑いの目で見られ続けるリスクを負うことになります。
そういう意味では,逮捕段階での報道についてはもっと慎重な姿勢が必要なのではないでしょうか。逆に,受け手の方も,誤認逮捕というものが十分にあり得るということを常に頭に入れてニュースを見なければなりませんね。
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