2014.03.10 [ 齋藤 健太郎 ]

昔は,自分の親が本当の親か,自分の子が本当の子かどうかなんてことを調べる方法はありませんでした。
顔が似ているとか,背格好が似ているとかそういうことぐらいしかなかったといえます。

ところが,DNA鑑定が出てきてから,血縁関係があるかどうかがはっきりとわかるようになりました。
また,DNA鑑定のおかげで,無罪になった方というのも沢山いらっしゃいます。DNA鑑定がなければ,犯人かどうかははっきりしないまま死ぬまで身柄を拘束されていたか,死刑になっていたという方もいるのです。
科学って素晴らしい。

しかし,家族関係というものははっきりしない方がいいことも沢山あります。

民法では,嫡出子(ちゃくしゅつし)というものがあります。昨年,最高裁で「非嫡出子」の相続分を「嫡出子」のそれの2分の1にするという法律が憲法違反とされましたので,聞いたことがある方が多いとは思います。
この制度は,通常,母親が誰かは簡単にわかるけど,父親が誰かというのはなかなかわからないことから,
「妻が婚姻中に懐胎した子は,夫の子と推定する」
とするものです。

あれれ,本当の父親じゃなくてもいいんだ・・・。
と思われる方もいるかもしれません。
そうです。誰が父親かなんてわからないんですから,ある程度確定させていかなければ社会がおかしくなってしまうので,確定させてしまおうという制度なんです。

そのために,「認知(にんち)」という制度や「嫡出否認(ちゃくしゅつひにん)」という制度があります。
お父さんの方から,「お前は私の子だよ」と認めるのが認知,逆に,「お前は俺の子じゃない」というのが嫡出否認ですが,後者については,1年間の期間制限があって,それを過ぎてしまうとできなくなります。
「親子関係不存在」という方法もあるのですが,その方法を取ることができる場合は限られています。

そのようにある程度血縁関係があるかどうかを問わずに「家族」かどうかを確定させる制度が,DNA鑑定によって事実上,崩壊しようとしています。
最近,ワイドショーを賑わせた大沢樹生さんと喜多嶋舞さんの泥沼劇なんていうのもまさにそれです。
果たして,DNA鑑定によって真実を知る方が良いのか,知らない方が良いのか。

ちなみに最近の最高裁判決で,嫡出否認の期間を過ぎてしまい,法律上は父親じゃないということはいえない場合には,養育費の請求が権利の濫用になる場合があるとされました。
血縁関係がないのに養育費を支払い続けなければならないとするのが場合によっては酷なことがあるのはよくわかります。

そういう私も子供が二人いるのでたまに心配になりますが,あまりに顔がそっくりなので多分大丈夫でしょう・・・ですよね奥様?