2014.09.23 [ 齋藤 健太郎 ]

たとえばバッグのひったくりにあった場合には,追いかけて取り戻すのは当然に許される行為です。
では,翌日に盗人がバッグを持っているのを発見した場合にはどうでしょうか。
これもある程度は追いかけて返還を求めることは許されるでしょうし,引っ張って取ろうとすることもOKでしょう。

もっとも,いずれの場合もその場で殴りつけて無理矢理奪い取ることはできるでしょうか。
それは基本的には違法になってしまうと思われます。

このような問題を「自力救済」の問題といいます。

他にも自力救済についてはいろいろな問題があります。
・違法駐車車両を勝手にレッカーしてもいいのか。
・部屋を貸している人が出ていかないから,扉の鍵を変えていいのか。モノを出してしまっていいのか。
などもよくある問題ですが,いずれも許されない自力救済となる可能性が高いのでやめましょう。

この社会は,法律の手続によって処理することが求められています。
権利というのは意外に窮屈なものです。

さて,隣の家の木が飛び出ている場合にはどうでしょうか。
勝手に切ってもいいのでしょうか。
この場合には,隣の土地の所有者の承諾がなければ切ってはいけません。

しかし,意外なことに,木の根がとなりに伸びてきている場合には,勝手に切って良いことになっています。
民法ではっきり認められています。
なんで枝とかはダメだけど根は良いのかよくわかりません。枝よりも根の方が樹木にとっての影響が大きい場合もあると思います。土地を掘削することよりも,枝が飛び出ていることの方が問題性が大きい気もしますね。

実は,顧問会社から,ソーラーパネルを設置する予定だが,隣地の木が飛び出ているが,所有者を発見することができないとの相談を受けています。このまま所有者と連絡が取れなければ,判決を取ることになります。枝を切るために,わざわざ判決をもらわないといけない場合もあるのです。非常に面倒ですが,これも法治国家だからこそなんです。

さて問題です。
私の書斎を妻がすぐに物置にしようとするのですが,これは勝手に搬出したら違法な自力救済でしょうか・・・。