2014.10.27 [ 齋藤 健太郎 ]

よくアメリカでは,何十億円,場合によっては何百億円という金額の損害賠償請求が認められることがあります。
ニュースで見ていても,日本に比べて非常に高額だなあという印象を受けます。

日本では,人が一人亡くなったとしても,1億円にいかないというところですが,アメリカではなぜそんなに高くなるのでしょうか。

その原因の一つが「懲罰的損害賠償」(ちょうばつてきそんがいばいしょう)というものの存在です。
これがあると,実際に受けた被害を回復するということを超えて,要するに悪いことをしたことに対する制裁としての金額が上乗せされるということになります。

アメリカでは,医療訴訟でも,金額が高額化するために,保険料が高額となっているということも聞きます。
それに対して,一部の州で医療訴訟における損害賠償額に制限が設けられるなど,対応がなされているようです。

日本では,被害を回復するということだけにとどめるという考えが強いため,今後も懲罰的損害賠償が認められる可能性は低いとは思います。
また,アメリカの陪審制(一般の人が判断)とは違って,日本では,民事事件は裁判官が判断します。
裁判員制度というものがありますが,あれは民事事件ではなく,刑事事件のみです。
仮に,日本でも陪審制が採用されるようなことがあれば,それと相まって,金額が高額化するということも考えられますが,今後も日本では控えめな金額にとどまることでしょう。

裁判ではある程度の相場というものがありますが,被害をお金に換算すること自体が非常に難しいことです。
ひどいことをされた相手に大きな負担をしてもらいたいというのはとても素直な感情でもあり,懲罰というかどうかはおいても,適切な損害賠償というものは常に考えていかなくてはならないと私は思います。
すでに失われたものは決して戻らないのですから。