2014.11.04 [ 齋藤 健太郎 ]

交差点などで車両同士の事故が起きた場合に,基本的に悪いのはどちらかというのがまず問題になりますが,その先に,もう一方の過失というものも問われます。いわゆる10ゼロの事案といえるかどうかです。

正確には,「過失相殺」といいます。

皆さんもご存じのとおり,双方が動いている事故だと,赤信号無視などの場合じゃなければ,全面的に片方が悪いということにはならず,もう一方にも過失が認められることが多々あります。

でも,私は9:1などの場合に果たして過失相殺を認めるべきだろうかという疑問をいつも持っています。
というのも,そのような事故は,片方に大きな過失があることが前提となっていて,その過失がなければ事故自体が生じなかったといえるからです。法定速度で普通に走行していた場合がほとんどですから,逆に,被害者側の「じゃあどうすれば避けられたのか?」という疑問にも答えられないはずです。実はこれは多くの人が抱いている感覚じゃないでしょうか。
非常に重い後遺症を負ったりした場合に,はっきりと落ち度といえるものは何もないにもかかわらず,もらえる損害が少なくなってしまうことになり,問題は大きくなります。

私の個人的な推測ではありますが,このような過失相殺が一般化したのは,保険会社同士の示談交渉が行われてきたことが大きく影響しているのではないでしょうか。常に逆の立場になりうる保険会社間の交渉では,事を納めるために一定の過失を認めるというのは十分に考えられます。

車を運転することがすでに過失なんだといわれれば仕方がないという気持ちになりますが,そこまで小さな過失を問うことにどれだけの意味があるのか再度考える必要なはないでしょうか?
少なくとも,それが交通事故の実務だから当然なんだという考えは正しいとは思えません。