2015.12.07 [ 齋藤 健太郎 ]

先日,テレビで運命の赤い糸の話が出たところ,妻が,「運命の赤い糸ってあると思うわ〜」と言っていたので,おお,なんだか珍しく良いこというなあと思いましたが,よく考えれば,結ばれているのが誰かなんて話しは全くしていませんでした。
いまだに誰か運命の人と結ばれる夢でも見ている可能性もあります。
実際にその直後にも,ミュージックステーションを観ながら,ジャスティン・ビーバーが可愛いと大興奮していました。

それはどうでもいいのですが,先日,山崎豊子の「運命の人」という小説を読み始めました。
「白い巨塔」「大地の子」「沈まぬ太陽」などの作者です。
それまではテレビドラマで知っている程度だったのですが,NHKスペシャルで山崎豊子について特集していたのを観てからすっかりファンになってしまいました。
取材にかける時間・労力もすごいですし,「戦後」という時代への鋭い指摘も共感できるものがありました。

「運命の人」の題材となっているのは,「西山記者事件」という事件です。
実は,法律を学んだ人であれば,誰もが聞いたことがある事件ですが,山崎豊子の描くような視点で背景を考えたことは一度もありませんでした。

本来は,記者が,国家間の密約を暴くという話なのですが,証拠の取扱がよくありませんでした。機密を示す証拠を,当時の若手議員であった横路孝弘議員らに渡したところ,内容をそのまま明らかにしてしまい,その出所を追及されてしまいます。

慎重に扱えば全く問題がなかったのですが,そこから記者の人生は180度変わってしまいます。国民を欺した密約を明らかにしたことで賞賛されるはずの人間が,不倫の当事者,そして犯罪者として扱われてしまうのです。国家公務員法違反(秘密漏示)の教唆(そそのかし)という形で・・・。国民も裁判所も密約の存在という重大な問題を明らかにしたことの価値を全く理解しませんでした。
世間の目を背けるために作られた犯罪にすっかり乗ってしまったといえるのではないでしょうか。

密約は,その後,米の公文書の開示によって存在が証明されました。

さて,秘密保護法って覚えていますか?
国家に都合の悪い事実を明らかにした人であっても守られる世の中になっていますか?
私は,妻の運命の人にはなりたいですが,国家に翻弄される運命は嫌です。