2016.04.04 [ 齋藤 健太郎 ]

以下のようなニュースを目にしました。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160404-00000004-mai-soci
「東京都中野区の路上で倒れているのが見つかりながら救護されず死亡した認知症の男性(当時83歳)の遺族が、男性を救急搬送しなかった東京消防庁に救急記録の写しの提供を求めたところ、「死者のプライバシー」を理由に拒否されている」そうです。4月1日からは閲覧は認められることになりそうですが,交付はダメとのこと。
そして,他の20政令都市のうち19都市は写しの交付を認めていることについて,東京消防庁の担当者は「他の自治体がいかように扱おうとも死者のプライバシーは守るものだという認識がある。提供した紙が第三者に渡れば死者のプライバシーを傷つけることが想定される」と説明したようです。

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これまで私が扱ってきた医療事件では,患者の遺族は,札幌市から救急搬送の記録の写しの交付を受けており,特に問題となったことはありません。
医療機関からの診療録の開示も,遺族であれば問題なく認められており,それは市立病院などでも同様の扱いになっています。
医療記録という極めてプライバシー性の高い情報でも開示が認められているのに,救急記録について開示が認められないというのはどういうことなのでしょうか。「死者のプライバシー」というのが,遺族の情報を得る権利よりも優先されるという法理はどこから来たのでしょうか。

しかも閲覧が良いならプライバシーはそもそも守られていないのではないでしょうか。
写しが第三者に渡るということが問題との理屈のようですが,情報というのは紙媒体だけではありません。閲覧した情報を遺族が流せばそれだけで十分です。
写真の場合や書類の性質によっては,コピーがインパクトを持つこともありますが,救急搬送記録についてはそこまで生々しい記録とは思いません。医療記録の方がよほど生々しいです。

いずれにせよ謎の対応です。
あまりに前時代的。