2016.12.05 [ 齋藤 健太郎 ]

好意同乗減額という理屈が,交通事故では存在しています。

何かというと,誰かの車に乗っていたときに,運転者の過失によって事故に遭った場合に,一定の場合に,賠償額を減額するというものです。
漢字からは「好意」で「同乗」させてもらっているという意味ですが,実際にはやや違うニュアンスの扱いがなされています。

運転しているわけでもなく,ただ乗っていただけなのに減額されるというのはちょっと酷すぎます。基本的には簡単に減額は認めるべきではないのではないかと思いますし,実際に,ただ無償で同乗したというだけでは認められるものではありません。

一方,裁判では以下のような場合に減額が認められるとされています。
1 事故発生の危険が極めて高いような客観的事情を認識していた場合
2 事故発生の危険が増大するような状況を作り出したような場合

具体的には飲酒しているのを知っていたとか,無免許で運転が下手くそなのを知っていたという事例のほか,同乗者が定員オーバーで乗り込んだ場合や窓から上半身出したなどという事例もあります。

まあ,いずれも減額すべき事情はそれなりに理解できるものです。

私としては,「好意同乗」という言葉は誤解を生むのでやめるほうが良いと思います。
「危険の引き受け」という観点から問題を整理していけばそれで足りるのではないでしょうか。
刑法でも被害者が危険を引き受けた場合には違法ではなくなるという理屈もあるところです。

最近,高齢者の事故がよくニュースになっていますが,高齢者が認知症であることを知っていて乗った場合にも減額の余地はあるかもしれませんね。