2016.06.27 [ 齋藤 健太郎 ]

お金というのは,どんどん増えて当たり前という考えから,交通事故や医療事故で,将来の失われた利益分を先にもらう場合には,一度にもらう場合にかなり減額されてしまいます。

たとえば,
100万円の収入で,10年間稼ぐことができるはずだった場合にそれが事故によって全くもらえなくなったとします。
そのときには,本来は
100万円×10年=1000万円が失われた利益のはずです。

しかし,ライプニッツ係数という魔術を使うと
一度にもらえるんだから772万1700円で我慢しなさいとされてしまいます。

これが20年の場合には,本来2000万円ですが,
一度にもらう場合には,1246万2200円まで減らされてしまいます。

さらに30年の場合には,本来3000万円ですが,
一度にもらう場合には,1537万2500円に減らされてしまいます。

少し飛んで50年の場合には,本来5000万円ですが,
一度にもらう場合には,1825万5900円となってしまいます!!!!!

10年とか20年多く働けなくても,大きな差は出ないことになってしまいます。

これだけでもものすごい驚きですが,実はもっとおかしな話があります。

0歳で事故に遭った場合には,67歳まで働くことができることを前提にして計算されるのですが,18歳までは働けないということも考慮されます。
その結果,仮に年収100万円の計算でやると(本当は平均収入でやるので男536万,女480万くらいとなりますが),本来は49年間働けることになるので,4900万円です。
しかし,一度にもらう場合には,
100万円×(19.2391−11.6896)
となるので,754万9500円にしかなりません・・・。

一応,ホフマン係数という別の方法もあって,その方が有利なのですが,ライプニッツでやる場合がほとんどです。

現実にはそんなに簡単にお金を増やせるはずがありません。
現実と大きくずれているのになぜ裁判実務は改められないのか。これは不正義ではないのでしょうか。
明らかにおかしいことがまかり通っていると思っているのは,私だけではないはずです。
それに慣れすぎて,疑問も感じなくなることが一番恐ろしいことです。