2014.09.02 [ 齋藤 健太郎 ]

法律の分野では,法律学の先生という方々がおられます。
我々も,司法試験を合格するために勉強をしていた時代には,この学者の先生方の書いた書籍を読んだり,学者の先生から教わってきました。

しかし,学者と弁護士とは大きく違います。
学者は相手との交渉スキルとか不要です。
反対尋問もうまくなりません。
裁判官の腹を探りながら和解を進める経験も積めません。
事実を聴き取って事件を作り上げるということもありません。
事実関係の調査ということもほぼ不要です。
あげればキリがありませんが,全くの別物といってもいいと思います。

それをとてもわかりやすく説明しているものを見つけました。
加藤雅信先生という大先生が,突然弁護士になって,しかも一人で事件をこなすということをされた際のことを書かれたものです。この方の説が最高裁判例に受け入れられたという噂があるようなないようなすごい方です。
でも,突っ込みどころ満載です。

【ポイント】
1 若い弁護士を使わなくても事件が一人でできると思った理由は,訴状を作成する過程を目にしたことが何度もあるから
→ 訴状作るところで事件はスタートです。それからが大変だと思うのですが。
2 社長とともに東京地裁に訴状を提出に行った。
→ 普通一緒にいきません。というか弁護士が行きません。若い弁護士使わせなくてもいいので,事務員さんは使わせてあげては?
3 裁判所から連絡先を事務所にするか大学にするか聞かれる
→ 裁判所がそんなこと聞いてくれるのですか・・・?扱いが違い過ぎます。事務所に所属しているので事務所でいいに決まっています。
4 期日請書ってなんですか?
→ 知らなくて当然だと思いますが,できれば事務員さんに聞いて下さい。素直すぎます。
5 「先生のような方には「民訴94条2項の書面」と申し上げるべきところを「期日請書」と申しあげ,大変失礼しました」
→ 絶対謝るのおかしいでしょう。そんな条文言われてもむしろわからないです。相手の心配りに感謝されていますが,これって嫌みですよね。
6 「この次も、求釈明に対する釈明がないようであれば、私は、その後の準備書面には、『当方が「虚」であると主張したのに対し、求釈明に対する釈明が依然なされていない。これは、主張事実が「虚」であるためと思われる』と書きますので、そのおつもりで。」その途端、室の空気は凍りつき、傍聴していた司法修習生たちは、身を固くした。」
→ これは,意訳すると「こちらはあなたはウソをついているといっているのに聞いてることに何も答えない。答えないのはウソだからだと今後は書きますよ!」と言ったということですね。それは凍り付きます。民事訴訟で相手を嘘つきということに何の意味もないからです。大抵はどちらかが嘘つきで,どちらがウソをついているかがテーマですから。
7 嘘つきなので不当訴訟として損害賠償請求 最高裁判例になれば民事訴訟が浄化
→ これが最高裁判例になるはずがない・・・いやいやわかりませんが。でも,結局は負けた方が損害賠償責任を負うということになるだけで,浄化にはなりません。もしかしたら民事訴訟がなくなり,弁護士が浄化されるというか成仏するかもしれません。

というわけで色々面白く読ませて頂きました。
無事勝訴なされたことは素晴らしいと思います。
あ,不当訴訟の印紙代はちょっともったいなかったかな・・・。