2014.09.15 [ 齋藤 健太郎 ]

知っている方も多いとは思いますが,交通事故の過失相殺については,この書籍がとても重視されています。
最近,久しぶりにこの本の改訂版が出ました。すでに5回目の改訂となり,とても分厚くなりました。今回からは,「歩行者と自転車の事故」や「駐車場内の事故」が追加され,ますます充実したということになります。
http://www.fujisan.co.jp/product/1281695978/b/1169424/

過去の裁判に照らして,多くの事故の類型が網羅されていて,大体,基本的な過失割合というものがわかります。
そこから,様々な事情を考慮して調整がなされていくので,それだけで決まるというわけではありませんが,保険会社もこの本を参考にしていますし,はっきりと「判例タイムズの〜番の事例で考えています」と言われることもあります。
実は,この書籍は東京地方裁判所の交通事故を担当している部が中心となって作成しています。

交通事故は毎日多数発生しています。そのような事故を適切に,そして公平に処理するという観点からは,このような基準がはっきりしていて,ある程度機械的な処理ができるのはとても大切なことだと思います。
しかし,一見似ているものの,事情が全く異なる場合というのがあり,その場合に無理矢理あてはめようとするとおかしなことになります。
また,どうしても基本過失において,被害者側がゼロじゃない場合には,交渉の結果,他の事情を考慮してゼロになるということはあまりありません。納得ができない場合には,どうしても裁判にしなければならなくなります。

とても便利なものですが,あくまで参考に過ぎないということを肝に銘じておかねばならないでしょう。