2016.04.19 [ 齋藤 健太郎 ]

というドラマの第一話を見ました。

私は,「こんなんみたら仕事思い出してブルーになるから観たくないんだけど・・・」と繰り返し訴えましたが,妻は松潤みたさに録画までしていたようで,仕方なく観ることになりました。

法律監修として,外部の弁護士と企業内弁護士が入っているようでしたが,ちょっと観ていてイライラしたところがあったので指摘しておきます。

1 民事事件の和解のシーンから始まりますが,ここでまずアメリカのドラマみたいに当事者も同席して,どちらかの事務所で一堂に会して和解交渉。
日本ではまずこういう和解交渉は好まれないと思います。文書でのやり取りかほとんどで,弁護士同士の面談がいいところでしょう。
2 刑事専門弁護士マツジュンは,アリバイの立証のために,パラリーガルと共にランボルギーニかなんかに乗って,首都高を爆走。運転はしていませんが,助手席にいます。当然,速度違反によってオービスが作動してしまいます。
それを平気で法廷で上映していますが,これは明らかに違法行為を指示しているので,弁護士倫理に違反しています。
パラリーガルが罰金を払えばいいってものではありません。
3 松潤がパラリーガルに対し,「公開されている監視カメラを集めて下さい」みたいな指示を出します。
どこにそんなものがあるのですか?
公的に設置された監視カメラが公開されることはないですし,私的に設置されたものであれば,その管理者の許可無しにみることなどできません。ロシアのサイトで,無断でアクセスしているのがあるのは知っていますが,それは「公開」ではありません。ましてやパラリーガルが当然のように集めることなど不可能でしょう。ハッキングでもしたのでしょうか。
ちなみに企業の内部情報も,企業弁護士ならすぐに集められるみたいなことも言ってますが,それも妄想でしょう。
4 防犯カメラに映っている犯人が,防犯カメラの場所を知って,顔を隠しているということを証明するために,わざわざセットまで作って,顔が映らないように実験していますが,そんなことしなくても,後ろ向きに歩いていることだけで明らかに不自然ですし,実験の意味がほとんどありません。見るからに不自然でした。
5 なぜか起訴前なのに,証拠写真などを弁護人が持っています。
基本的に証拠は起訴前には一切開示されません。こちらで探した証拠は別ですが,検察官が持っている証拠は起訴後に開示されるので,その前に証拠を開示されているのはおかしすぎます。
6 マツジュン先生は,ヤメ検の上司にいいます。
「被告人の利益なんてどうでもいいんです。ぼくは事実が知りたいんです」
それ以外にも「真実は見方によってたくさんあるが,事実は一つ」みたいなことも言っていました。
被告人の利益を軽視して良いとか誠に許すまじき発言です。「真実」を探すことによって,被告人の利益を守るのが弁護士の仕事であって,趣味で探偵ごっこやるのが仕事ではありません。
そして,明らかに「真実」と「事実」という言葉の使い方を間違えています。言うなら「真実は一つ」でしょう?
7 証人尋問で,検察官が,一回,マツジュン先生が同じ質問をしたところで,重複する質問だと異議を言うが,却下される。その異議は明らかにおかしい異議だった。
しかし,その後マツジュン先生は何度も何度も証人におなじ事を聞きます。しかし,検察官はそこでは重複の異議を出さない・・・検察官は明らかに無能。反対尋問で証言を固めてから弾劾するのはセオリーですが,マツジュン先生はやり方が下手すぎます。
8 目撃証人を弾劾する重要ポイントが,「服の色」でしたが,服の色よりも問題は顔でしょう。
暗いところで見た服の色を正しく証言するかどうかは本質的ではなく,証人としてもさほど焦るようなことでもありません。実際の証人ならこれで崩れないでしょう。
ところが,3流ドラマにありがちな,証人総崩れ状態になり,検察官もそのウソを塗り固めて助け船すら出さない。
9 そして,法廷内で,真犯人を名指しするという驚きの展開。一歩間違えばただの名誉毀損です。
なんと恐ろしいことをするのでしょう。

そういえば,突然法廷で,被告人の体内から睡眠薬が検出されたみたいなことを言ってたけど,どうやって証明したのかな・・・。

ちなみに何度も99.9%は有罪なんだ!というのが言われていますが,あくまで罪を認めている人も含めての統計であることに注意する必要があります。
否認している人の統計をもとに議論すべきでしょう。

どうして弁護士が監修してて,こんなことになるのか。
しかも,協力にはあの刑事弁護の大家である高野隆先生のお名前まで・・・。

だから観たくないと言ったんです・・・。