2016.06.19 [ 齋藤 健太郎 ]

弁護士は無力です。

調査とはいっても,ドラマのように次から次に新しい事実が出てくるわけではありません。
探偵さんをお願いすることはありますが,そこまで思うように証拠が取れるということはそうそうありません。

しかし,だからこそとても大事にしていることがあります。
それは現場に行くことと,事実関係の聴き取りです。
当然,時間が経てば,記憶も曖昧になったり,混乱することもあるため注意しなければなりませんが,やはり現場に行って,その現場のイメージを掴み,関係者からできる限り話を聞くということは基本中の基本なのです。

これは私が最初から出来ていたことではありません。
先輩弁護士や尊敬する弁護士の先生方と一緒に事件をさせて頂くなかで,そういうことを一つ一つ教えてもらったのです。

さて,本題に入りますが,最近はやりの第三者委員会が,また報告書を出しました。
今回は桝添さんという政治家一人の問題ではなく,日本という国を揺るがす福島第1原発事故におけるものです。
東電は,メルトダウン(炉心溶融)という言葉についても定義ないしマニュアルを内部的に持っており,その状態にあることを認識していたのに,長期間,炉心溶融とは公表せずにいました。
この問題について,東電側が得意の第三者委員会を設置して,あのマムシの善三さんというヤメ件先生を含む法曹関係者が報告書を作成し,公表したとのことです。

私は報告書を直接読んでいませんが,一つだけ言えることがあります。
報告書では,官邸の指示が推認されるとしていますが,それに対して,管元総理や枝野元官房長官が強く抗議しているとのことです。
果たして,彼らは官邸に事実関係の聴き取りはしたのでしょうか。
当時の社長が,なんだか良く覚えていないけど,官邸からの指示だったんじゃないかな〜なんて言っているだけで事実を推認したわけじゃないですよね?
官邸からの指示だというのなら,当時の関係者から十分に事情を聞いて,それから判断するのが基本であり,それを怠ったことは,これまた弁護士の信頼を貶めたというほかありません。

弁護士が御用聞きだと思われることだけは本当に嫌ですね。