2017.01.25 [ 小西 政広 ]

後遺障害というと,一般的には体に怪我の痕跡が残るもの,というイメージかもしれませんが,損害賠償理論上は,労働能力や収入に影響しない限り原則として後遺障害とは評価されないこととなっています。

顔や手や足の露出部分の傷跡は,後遺障害として評価されますが,これはそういう傷跡があることによって人からの印象が悪くなり,営業成績が下がる,などといった影響があることによります。

では,たとえばお腹に手術のあとが残ったとなったらどうでしょうか。

これは原則として後遺障害に含まれないこととなるのです。

後遺障害は,実務上類型化されていますが,これらの類型には,隠れた部分の傷跡は後遺障害とされていないため,どの後遺障害にも該当しないということを前提として,慰謝料の金額で調整されることとなります。

しかし服を着たら見えない部分に傷跡が残ることというのは,それほど軽視してよいものなのでしょうか。私も虫垂炎のちょっとした傷跡でもやはり気にはなります。
それがより大きなものであれば,慰謝料を少し増額する,といった調整的な解決は明らかに不適切だと思います。

日本の損害賠償はつくづく謙抑的だと実感させられます。