2014.10.12 [ 神村 岡 ]
前回のブログで,多額の飲食をした未成年者が代金の支払を免れた事例を取り上げました。前回のブログではカード会社と父親との関係を主に取り上げましたが,今回は未成年者の店に対する債務について取り上げます。
客が飲食店で飲食をする場合,客と店との間では,店が客に対して飲食物等を提供して,客がその対価を支払うという契約が成立しています。
それは未成年者が飲食する場合でも同様です。また,先の事例では,客である未成年者はカードで代金を支払う約束をしたことになります(自分のカードではなかったわけですが)。
ただし,未成年者が詐術を用いて,自分が未成年者ではないと相手に信じさせた場合には,その法律行為は取り消すことができないとされています(同21条)。「詐術を用いた」とは騙すことで,そのような場合には未成年者より騙された相手の方を保護すべきだからです。
もっとも,未成年者が自分が大人だと相手に信じさせるような行動をとった場合でも,それが常に「詐術を用い」たと評価されるわけではなく,詐術はそれなりに高度である必要があります。簡単にわかる嘘にだまされた相手は保護するに値しないということでしょうか。
先の事例では,未成年者は平然とお酒を飲んだり煙草を吸ったりして,あたかも大人であるかのように振る舞いましたが,裁判所はそのような行動は詐術には当たらないと判断しました。
なお,未成年者が,特に親の同意を得ずに買い物をしたり飲食をしたりするのはごくありふれたことですが,このような場合の未成年者の法律行為が全て取消し得るわけではありません。
未成年者が法定代理人から目的(使途)を定めて財産(お金など)の処分を許された場合,未成年者はその目的の範囲内で自由に財産を処分することができ(同5条3項),その反面で取り消すこともできません。
未成年者が小遣いで自由に買い物などをする場合,目的を広く捉えれば,親が事前に財産の処分を許しているということになるでしょう。