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神村 岡弁護士ブログ

アイスホッケーのルール改正

2014.10.25 [ 神村 岡 ]

札幌の社会人リーグに限った話ですが,最近ルールの改正がありました。

アイスホッケーには,アイシングというルールがあります。
端的にいうと,中央よりも手前からパックを相手陣地に放り込んだらプレーが止められて自陣からリスタートすることになるというものです。

アイスホッケーのの競技において,スケートリンクは縦に3つに分けられます。味方チームから見ると,味方チームのゴールのある方から順に,ディフェンディングゾーン,ニュートラルゾーン,アタッキングゾーンです。
そして,ちょうど真ん中のラインがセンターライン,ゴールがあるラインがゴールラインです。

センターラインの手前から,アタッキングゾーンに向けてパックを放り込み,それが誰にもふれずに相手のゴールラインを越えると,アイシングが成立します。アイシングが成立するとプレーが止められ,ディフェンディングゾーンに戻ってフェイスオフで再開されることになります。

これまでは,以上のような単純な話だったのですが,今回の改正によって,放り込まれたパックがゴールラインを越えても,攻撃側(放り込んだ方)がそのパックに先に触りそうであればアイシングにはならない,ということになりました。

これまでにも細かなルール改正はありましたが,これはなかなかインパクトのあるルール改正です。

この改正によって,ディフェンスがパックをアタッキングゾーンに放り込んで,フォワードが走ってそれを奪いに行くという作戦が成立することになります。アイスホッケーにもオフサイドがあるため,フォワードがパックが放り込まれる前にアタッキングゾーンで待っているということはできないのですが,とりあえずフォワードが頑張って走れば何とかなるという要素が強まってしまいました。

私の今のポジションはフォワード(レフトウィング)なので,運動不足の体にむち打って走らざるをえない場面が増えそうです。

下請法

2014.10.18 [ 神村 岡 ]

先日,日弁連が主催した下請法の研修会に参加しました。

下請法というのは,発注する側の会社(親事業者)と下請け側の会社(下請事業者)の関係を規律する法律で,一般的に下請事業者は親事業者との関係で交渉力が弱く不利な地位に置かれることが多いため,不利益を受けやすい下請事業者を保護するための法律です。

主な内容は以下のようなものです。

まず,親事業者の義務として,
①契約の内容などを示した書面を下請事業者に交付・保管すること
②下請事業者への代金の支払い期限を定めること(支払期限は物品等を受領する日から60日以内)
などが定められています。

また,親事業者への禁止事項として,
①物品等の受領拒否
②代金の支払い遅滞
③代金の減額
④返品
⑤親事業者の商品等の購入の強要
⑥親事業者の不当な行為を公正取引委員会等に告げたことに対する報復措置
などが禁止されています。

公正取引委員会は,親事業者がこの法律の規定に違反した場合,違反の状態を解消するように是正勧告をすることができる他,従わない場合には課徴金を課すこともできます。また,刑事罰としての罰金もあります。

このように,下請事業者を保護するための法律が整備されているのですが,この法律に反するような行為は後を絶ちません。
公正取引委員会への報告に対する報復措置が禁止されているとしても,将来的に発注を打ち切られてしまうリスクを考えると,下請事業者はなかなか強気に出られないということもあるかもしれません。

実は,下請法のような法律が定められているのは日本だけなのだそうです。
他の国では親事業者が好き放題しているのかというとそうではなくて,他の国では日本ほど下請事業者が不利な地位には置かれていないため,法律を定める必要もないのです。

日本で下請事業者が不利な地位に置かれているのは,同じ親事業者から長期間にわたって受注する企業が多いこと,全受注の中で特定の親事業者からの受注が占める割合がとても高いことなどが原因になっているようです。

親事業者との関係で不利な立場におかれることを考えると,受注先を増やすとか,一定期間ごとに取引を見直すといった工夫が下請事業者には求められると思いますが,新規開拓が難しい傾向が日本にはあるとか,一定のシェア以上の取引を親事業者から求められるとか,いろいろと障害もありそうです。

そうすると,提供する商品やサービスの質を向上させ,差別化を図り,替えのきかないものを提供していくということが,結局は下請事業者が自己防衛をするための一番の近道かもしれません。

未成年者の法律行為

2014.10.12 [ 神村 岡 ]

前回のブログで,多額の飲食をした未成年者が代金の支払を免れた事例を取り上げました。前回のブログではカード会社と父親との関係を主に取り上げましたが,今回は未成年者の店に対する債務について取り上げます。

客が飲食店で飲食をする場合,客と店との間では,店が客に対して飲食物等を提供して,客がその対価を支払うという契約が成立しています。

それは未成年者が飲食する場合でも同様です。また,先の事例では,客である未成年者はカードで代金を支払う約束をしたことになります(自分のカードではなかったわけですが)。

しかし,未成年者が法定代理人である親の同意を得ずに何らかの法律行為をした場合,その法律行為は原則として取り消すことができます(民法第5条2項)。未成年者の保護のため,そもそも未成年者が法律行為をする場合には法定代理人の同意を得なければならないとされており(同1項),その反面として,その同意を得ない法律行為は取り消すことができるとされているのです。

ただし,未成年者が詐術を用いて,自分が未成年者ではないと相手に信じさせた場合には,その法律行為は取り消すことができないとされています(同21条)。「詐術を用いた」とは騙すことで,そのような場合には未成年者より騙された相手の方を保護すべきだからです。

もっとも,未成年者が自分が大人だと相手に信じさせるような行動をとった場合でも,それが常に「詐術を用い」たと評価されるわけではなく,詐術はそれなりに高度である必要があります。簡単にわかる嘘にだまされた相手は保護するに値しないということでしょうか。

先の事例では,未成年者は平然とお酒を飲んだり煙草を吸ったりして,あたかも大人であるかのように振る舞いましたが,裁判所はそのような行動は詐術には当たらないと判断しました。

なお,未成年者が,特に親の同意を得ずに買い物をしたり飲食をしたりするのはごくありふれたことですが,このような場合の未成年者の法律行為が全て取消し得るわけではありません。

未成年者が法定代理人から目的(使途)を定めて財産(お金など)の処分を許された場合,未成年者はその目的の範囲内で自由に財産を処分することができ(同5条3項),その反面で取り消すこともできません。

未成年者が小遣いで自由に買い物などをする場合,目的を広く捉えれば,親が事前に財産の処分を許しているということになるでしょう。

契約解除のその後

2014.10.07 [ 神村 岡 ]

クレジットカードやローン提携販売(自動車ローンなど)で何か物を購入した後で,クーリングオフや債務不履行で購入契約が解除されたとします。そのとき,クレジット会社やローン会社に対する支払いはどうなるでしょうか。

この場合,割賦販売法30条の4,35条の3の19により,基本的には,元の購入契約が解除されたことでクレジット契約やローン契約も解除されますので,クレジット会社やローン会社に対する支払いも免れることになります。

ただし,一定の場合には,クレジット会社やローン会社に対する支払いを免れることができません。

少し細かいですが,割賦販売法が対象としているのは,ローン契約による購入の場合は支払いが2か月以上にわたるものだけで,クレジットの場合も2か月以内に一定の支払い日に全額を支払う(通常の一括払い)場合は対象としていません。
また,総支払額が4万円未満の場合にも,上記のようなルールは適用されません。
したがって,このような場合,元の購入契約を解除してもカードの支払いは免れないという事態が生じることもあります。

実際に裁判で争われた事例として,未成年者が勝手に親のクレジットカードを使って豪遊(「飲食」)してしまい,親がカード会社から数百万円の代金の支払いを求められたという事案がありました。

このような場合,店との間の元の契約が未成年者による契約であることを理由に取り消されても,カード会社に対する支払い義務を当然に免れられるわけではなく,支払い義務を免れさせるのが相当といえるような特別な事情がなければなりません。

実際の裁判では,未成年者が豪遊したことでカードの利用額が跳ね上がり(他人による使用を疑わせる事情があった),カード会社が未成年者に本人確認を行い,その未成年者が本人(父親)の生年月日等の情報を適切に答えられなかったにもかかわらず,そのままカード利用を通してしまったといった事情があり,カード会社の落ち度が大きかったということでカード会社から父親に対する請求が棄却されました。

未成年者が一人勝ちした事案ということになりますね。。

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