2015.04.25 [ 神村 岡 ]

基準に満たない性能の免震ゴムが出荷され建築に使用されていたことが,大きな社会問題になっています。

性能不足の免震ゴムの出荷は96年からで,それを使用して建てられた建物は100棟近くということですから,その影響は甚大です。

メーカーによれば,基準に満たない免震ゴムは全て交換する方針とのことですが,100棟にも及ぶ建物の基礎部分に用いられるであろう免震ゴムを交換するには,相当な費用がかかるでしょう。

メーカーには,基準を満たした製品を納期までに納めなければならないというプレッシャーがあったのでしょうか。しかし,影響の大きさを考えれば,超えてはいけない一線だったと思います。

少し法的に分析してみると,メーカーは直接免震ゴムを出荷した業者に対しては,債務不履行責任を負いますので,基準を満たした免震ゴムを提供する債務を負います。

他方で,メーカーは自治体等の建築工事の発注者との間では直接の契約はしていないでしょうから,契約に基づく責任である債務不履行責任ではなく,不法行為責任を負うことになります。その内容は,基準を満たす製品を提供するという履行責任ではなく,基準に満たない製品が使用されたことによって発注者が被った損害を金銭的に賠償する責任です。

交換の対応をする場合,基準を満たした製品を施工業者等に提供し,交換工事に要する費用を負担し,工事期間中に建物の所有者が被る不利益を補償するということになると思います。

以上のようなメーカーの責任は,施工から長期間経過している建物に関しては,消滅時効によって債務が消滅している可能性もあります。

しかし,社会的責任,信用などを考えれば,今後事業を継続していくのであれば,基準を満たす製品と交換するという対応を取らざるを得ないでしょう。