2014.03.22 [ 神村 岡 ]

ドンキホーテが,AKBの運営会社と大手パチンコメーカーに対してパチンコ台の販売差止めと50億円の損害賠償請求を求める訴訟を起こしたそうです。

http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/domestic/civil_code/?id=6111028

ドンキホーテの主張は,ドンキホーテはAKBを創設期から支援していて,AKBの公式グッズの独占販売権を持っているのに,パチンコメーカーが無断でAKBのパチンコ台を作って販売しているから,その分損害を被ったというものです。

ドンキホーテとAKBが関係が深かったということ自体初めて聞きましたが,「独占販売権」に基づいてパチンコメーカーを訴えているという点がピンときません。


仮に,ドンキホーテとAKB運営会社との間で,AKBの公式グッズはドンキホーテ以外には販売させないという合意があったとしても,それはあくまでドンキホーテとAKB運営会社との間の合意に過ぎず,その合意によって第三者の行動が制限されるということは通常は考えられません。

運営会社が合意に反した場合には契約違反ということで損害賠償責任を負うとしても,第三者は関係ないということです。

例えば,特許の使用許諾の場合にも同じようなことがいえます。

特許権者が特定の人に特許発明を独占的に使用することを許可することがありますが,この場合でも,このような許可をしたことを登録(専用実施権の登録)して初めて,許可を受けた人(専用実施権者)は第三者に対して特許発明の使用差し止め請求をしたり,損害賠償請求をしたりすることができます。

例外的に,特許権者に対して無断で特許発明を使用している(特許権を侵害している)人に対しては,特許権者が侵害者に対して行使できる差し止め請求権を,独占的な許諾を受けた人が特許権者の代わりに行使することができると考える余地はありますが,これはあくまで第三者が特許権者に無断で特許発明を使用している場合です。
特許権者が,独占的な許可を与えた人との合意に反して他の人にも特許発明の使用を許可してしまった場合,特許権者自身は後から許可した人に対しては何もいえませんから,独占的な許可を得た人が特許権者の請求権を代わりに行使するということも不可能です。


ドンキホーテとAKBの事案では,独占的なグッズの販売権を与えるという合意があったのであれば,その合意に反したAKBが契約違反による損害賠償責任を負うということはわかりますが,パチンコメーカーが何か責任を負うというのはよくわかりません。

とはいえ,ドンキホーテはおそらく弁護士を代理人に立てて訴訟を起こしているでしょうから,記事だけではわからない何らかの事情があるのではないかと思います。

相当時間がかかると思われますが,訴訟の経過に関する続報を待ってみます。