2014.03.01 [ 神村 岡 ]

先日,遠軽の小学生が自殺したことについて両親が町や道に損害賠償を求めた訴訟で,110万円のみの支払いを命じた1審判決を維持し,両親の控訴を棄却する判決が,札幌高等裁判所で言い渡されました。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140227/trl14022716400003-n1.htm

両親は,担任の教師の指導が厳しすぎたために小学生が死亡したと主張していましたが,1審では,教師の指導の違法性を認めず,自殺後の町の調査義務違反や報告義務違反のみを認めて,110万円の支払いを命じていました。

朝日新聞の記事では因果関係が問題となったかのような記載になっていますが,因果関係以前の指導の違法性のところが否定されています。

高裁判決の詳細はわかりませんが,1審判決の内容を見ると,裁判所は概ね町側の主張する事実関係を認定しています。そして,その事実関係を前提として,指導は厳しすぎるが違法とはいえないと評価しています。

損害賠償請求の訴訟を起こす場合,事実関係についての立証責任は原告にあります。そのため,原告が事実関係を立証しない限り,請求は認められません。

今回の件では,両親は,教師に違法と評価されうるような違法な指導があったことまで立証しなければならず,もともと難しい戦いを強いられていたといえます。

実際に違法な指導が行われていたのであれば適切な賠償がなされるべきです。
他方で,指導が多少厳しすぎたに過ぎないのであれば,やはり賠償請求が認められるべきではありません。

真相に基づいた解決がなされるのがベストですが,裁判所としては,訴訟の当事者から提出された証拠から事実を判断するしかなく,裁判所が認定した事実が真実とは限りません。ここに裁判の限界があります。

今回の判決が認定した事実関係が真実であればよいのですが・・・