2016.03.26 [ 神村 岡 ]

国際仲裁についてのセミナーに参加してきました。

国際仲裁とは,文字どおり国際的な紛争についての仲裁手続のことですが,仲裁人が当事者双方の主張や証拠を検討して最終的な結論を下し,両当事者はそれに拘束されるという意味で,調停よりもむしろ裁判手続に似ている制度です。

裁判と比較した場合の大きなメリットがいくつかあります。

一つは,当事者が自由に仲裁地(国)や仲裁人を選ぶことができるという点です。
国際仲裁機関は各国にありますが,どの国の仲裁機関を使うことも可能です。当事者双方にとって便利な中立的な第三国の仲裁機関を使うということもよくあるようです。

また,裁判に比べてかなり短時間で解決まで至ることができます。
国際的紛争の裁判の場合,他国への送達だけで数ヶ月から1年以上の時間を要することがありますが,仲裁の場合は柔軟な手続がとられますので,送達にはほとんど時間はかかりません。必然的に,解決までの期間もかなり短縮することができます。

強制執行が可能な場合が多いという点も大きなメリットです。
ある国の裁判で判決が出た場合に,債務者が任意に債務を履行しない場合には強制執行をしようということになりますが,国によっては強制執行が認められないケースも多々あります。例えば,日本の裁判で判決を得ても,ロシアでは強制執行をすることができません。
国際仲裁では,ニューヨーク条約によって,ほとんど全ての主要国が国際仲裁の拘束力を受けることに合意しているため,裁判の判決による強制執行が不可能な場合にも強制執行が可能だったりするのです。

もっとも,仲裁は一般的に費用が結構かかりますし,裁判と違って不服申立の制度がないという特徴もありますので,一概に仲裁の方が裁判よりも優れているとは言えません。
裁判と仲裁のいずれが適切かは,事案によるといえるでしょう。

いずれにしても,国際的な取引,特に長期間に亘る取引を始める際には,いざ紛争が生じてしまったときの解決方法についても予め考えておき,契約書に盛り込んでおくべきでしょう。