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神村 岡弁護士ブログ

捕鯨

2014.04.04 [ 神村 岡 ]

国際司法裁判所で,南極海における日本の調査捕鯨が国際捕鯨取締条約に違反しているという判決が出ましたね。

この判決が出た以上は,これまでどおりの調査捕鯨を南極海で行うことはできなくなりますし,他の地域での調査捕鯨にも影響が出るかもしれません。

個人的には,調査捕鯨の禁止は正当なものではないと思います。調査捕鯨によって,鯨の生態や生息数についてのデータの収集が可能になり,ひいては鯨の保護にもつながりますし,現に調査捕鯨によって鯨の数が減少しているということもない(と思われる)からです。

ただ,国際捕鯨取締条約を前提とすれば,判決は正当だろうと思います。

条約は,基本的に捕鯨を禁止していて,例外的に調査捕鯨のみを認めています。
日本が行っている「調査捕鯨」が真に調査捕鯨であれば問題はないのですが,実態は商業捕鯨の側面がかなり強いのではないでしょうか。この点は議論のあるところだと思いますし,裁判でもこのあたりが肝だったのでしょうが,捕獲数がかなり多いことや特定の種類に偏って捕獲していることを考えると,純粋な調査捕鯨とは見にくいのではないかと思います。
とすると,「調査捕鯨」の名目で実態としては商業捕鯨を行っているということになりますので,それは条約違反だろうという結論にどうしてもなってしまいます。

日本としては,捕獲数を減らすなどして,実態としても調査捕鯨だと胸を張って言えるような状態にするより他ないと思います。

しかし,個人的には,商業捕鯨を原則禁止するという条約の枠組み自体が果たして妥当なものなのかという疑問があります。

確かに,乱獲によって生息数が減少することは避けなければなりませんが,そのためには捕獲数をコントロールすればよいのではないでしょうか。

また,捕鯨に対しては残虐だという論調の批判がありますが,そもそも他の生物を食料として人は生きていますから,捕鯨だけ残虐だというのは筋が通っていないと思いますし,何より,捕鯨をするかどうかは結局は食文化の問題だと思うからです。

今回の判決が,捕鯨と鯨食という食文化の否定につながらないかが心配です。

もっとも,私自身はほとんど鯨を食べていませんけどね。

袴田事件

2014.03.28 [ 神村 岡 ]

昨日,袴田事件について,再審開始決定が出ました。

袴田事件とは,1966年(昭和41年)に発生した,会社専務の一家4人が殺害され放火された事件で,当時専務が勤務していた会社の従業員であった袴田氏が犯人として逮捕され,裁判では一貫して容疑を否認していたものの,有罪とされ,死刑判決を言い渡されていました。

裁判では,袴田氏の捜査中の「自白」や,裁判中に発見された作業服などが証拠とされていました。

しかし,最近になって,作業服に付着していた血痕が袴田氏のものでない可能性が高いことがDNA鑑定によって明らかになり,これが今回の再審開始決定の大きな理由になったようです。
これまでは,血液の状態が悪かったため鑑定のための十分な資料がなく,DNA鑑定ができなかったのが,科学技術の進歩によってDNA鑑定が可能になったのです。

袴田氏は,再審開始と同時に死刑と拘置の執行が停止され,釈放されました。
犯人として逮捕されてから,実に47年間以上も拘束されていたのです。しかも,死刑が確定してから数えても30年以上です。
袴田氏の心境は想像を絶します。

再審開始決定で,裁判所は,犯行時の着衣とされた証拠が捜査機関によってねつ造された可能性にも言及しています。
これが事実であるとすれば恐ろしいことですね。


ドンキホーテとAKB

2014.03.22 [ 神村 岡 ]

ドンキホーテが,AKBの運営会社と大手パチンコメーカーに対してパチンコ台の販売差止めと50億円の損害賠償請求を求める訴訟を起こしたそうです。

http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/domestic/civil_code/?id=6111028

ドンキホーテの主張は,ドンキホーテはAKBを創設期から支援していて,AKBの公式グッズの独占販売権を持っているのに,パチンコメーカーが無断でAKBのパチンコ台を作って販売しているから,その分損害を被ったというものです。

ドンキホーテとAKBが関係が深かったということ自体初めて聞きましたが,「独占販売権」に基づいてパチンコメーカーを訴えているという点がピンときません。


仮に,ドンキホーテとAKB運営会社との間で,AKBの公式グッズはドンキホーテ以外には販売させないという合意があったとしても,それはあくまでドンキホーテとAKB運営会社との間の合意に過ぎず,その合意によって第三者の行動が制限されるということは通常は考えられません。

運営会社が合意に反した場合には契約違反ということで損害賠償責任を負うとしても,第三者は関係ないということです。

例えば,特許の使用許諾の場合にも同じようなことがいえます。

特許権者が特定の人に特許発明を独占的に使用することを許可することがありますが,この場合でも,このような許可をしたことを登録(専用実施権の登録)して初めて,許可を受けた人(専用実施権者)は第三者に対して特許発明の使用差し止め請求をしたり,損害賠償請求をしたりすることができます。

例外的に,特許権者に対して無断で特許発明を使用している(特許権を侵害している)人に対しては,特許権者が侵害者に対して行使できる差し止め請求権を,独占的な許諾を受けた人が特許権者の代わりに行使することができると考える余地はありますが,これはあくまで第三者が特許権者に無断で特許発明を使用している場合です。
特許権者が,独占的な許可を与えた人との合意に反して他の人にも特許発明の使用を許可してしまった場合,特許権者自身は後から許可した人に対しては何もいえませんから,独占的な許可を得た人が特許権者の請求権を代わりに行使するということも不可能です。


ドンキホーテとAKBの事案では,独占的なグッズの販売権を与えるという合意があったのであれば,その合意に反したAKBが契約違反による損害賠償責任を負うということはわかりますが,パチンコメーカーが何か責任を負うというのはよくわかりません。

とはいえ,ドンキホーテはおそらく弁護士を代理人に立てて訴訟を起こしているでしょうから,記事だけではわからない何らかの事情があるのではないかと思います。

相当時間がかかると思われますが,訴訟の経過に関する続報を待ってみます。

実務補習が終わりました

2014.03.15 [ 神村 岡 ]

15日間にわたった中小企業診断士の実務補習が,今週の月曜で終わりました。

1企業当たり5日間ずつ,3企業で15日間でしたが,一つの企業に訪問してヒアリングをしてから報告をするまでの間に,1週間程度の中日が設けられており,その中日を使って作業を行わざるをえなかったので,なかなか大変な研修でした。

ともあれ,実務補習を終えましたので,4月から中小企業診断士として登録できることになりました。

診断士の業務は,中小企業に対する経営全般のコンサルティングです。組織のあり方,マーケティングの方法,財務面の改善など,中小企業の抱える様々な問題に対して解決策を提示します。

中小企業の中には,経営者が非常にしっかりしていて,診断士の方で改めてアドバイスできることはあまりないという企業もあります。15日間の実務補習の中でも,我々実務補習生が感心してしまうような経営をされている企業もありました。しかし,そのような企業は少数派ではないかと思います。

企業を長く続けていくのは大変なことです。企業の内部と外部で様々な環境変化が起こりますから,適切に対応し続ける必要があります。

診断士は,企業が持続的に発展していくための体制作りや,様々な環境変化への対応策をアドバイスをします。
経営について体系的に学んだことがない,自分の判断だけでは不安だという経営者の方に対しては,良き相談相手として使ってもらえる存在だと思います。
また,ベテラン経営者の方にも,普段とは違う切り口からの提案や,情報提供などでお役に立てることもあると思います。

経営相談に興味がおありの方は,法律相談のついででも構いませんので,是非お気軽にご相談ください。



従業員のミスは誰の責任?

2014.03.08 [ 神村 岡 ]

アルバイト先でお皿を割ってしまった・・・
会社の車(しかも無保険)をぶつけてしまった・・・

よくある話だと思います。

このように,従業員のミスで会社に損害を与えてしまった場合,従業員は会社に対して全額を賠償しなければならないのでしょうか。

損害を与えてしまったのだから当然弁償すべきだろうと考える方もいるかと思います。

しかし,基本的に,会社から従業員に対する請求は制限されます。

なぜかと言うと,会社は従業員を使用することで利益を上げている以上,それに伴って発生してくるリスクについては負担すべきだからです。これを,「報償責任」といいます。

個人でやっていれば利益もリスクも全部負担するはずのところを,たまたま従業員を使用しているからといってリスクだけを従業員に負わせることは許されないということです。

したがって,日常的に繰り返す業務の中で,注意をしていてもたまには発生してしまうというような事故については,従業員に責任を負わせることはできません。皿を割ったというケースはこれに当たることが多いでしょう。

他方,従業員に明らかに落ち度があるという場合には,従業員も一定の責任を負うことになります。
ただし,報償責任の観点から,会社は一部しか請求することができません。その割合はケースバイケースですが,従業員の責任はかなり制限されます。

結局,従業員が意図的に会社に損害を与えたといった例外的な場合を除いて,会社も一定の責任を負うということになります。

会社としては,ミスが発生しにくい体制づくり,各種保険への加入などによって,リスクを軽減する対策を講じておくべきでしょう。

教師の指導は適法だったか?

2014.03.01 [ 神村 岡 ]

先日,遠軽の小学生が自殺したことについて両親が町や道に損害賠償を求めた訴訟で,110万円のみの支払いを命じた1審判決を維持し,両親の控訴を棄却する判決が,札幌高等裁判所で言い渡されました。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140227/trl14022716400003-n1.htm

両親は,担任の教師の指導が厳しすぎたために小学生が死亡したと主張していましたが,1審では,教師の指導の違法性を認めず,自殺後の町の調査義務違反や報告義務違反のみを認めて,110万円の支払いを命じていました。

朝日新聞の記事では因果関係が問題となったかのような記載になっていますが,因果関係以前の指導の違法性のところが否定されています。

高裁判決の詳細はわかりませんが,1審判決の内容を見ると,裁判所は概ね町側の主張する事実関係を認定しています。そして,その事実関係を前提として,指導は厳しすぎるが違法とはいえないと評価しています。

損害賠償請求の訴訟を起こす場合,事実関係についての立証責任は原告にあります。そのため,原告が事実関係を立証しない限り,請求は認められません。

今回の件では,両親は,教師に違法と評価されうるような違法な指導があったことまで立証しなければならず,もともと難しい戦いを強いられていたといえます。

実際に違法な指導が行われていたのであれば適切な賠償がなされるべきです。
他方で,指導が多少厳しすぎたに過ぎないのであれば,やはり賠償請求が認められるべきではありません。

真相に基づいた解決がなされるのがベストですが,裁判所としては,訴訟の当事者から提出された証拠から事実を判断するしかなく,裁判所が認定した事実が真実とは限りません。ここに裁判の限界があります。

今回の判決が認定した事実関係が真実であればよいのですが・・・


隠れ家

2014.02.22 [ 神村 岡 ]

先日,「隠れ家」を売りにした店が,無断で「食べログ」に情報を掲載されて営業戦略が台無しになったとして,「食べログ」を運営するカカクコムに対して投稿の削除と330万円の損害賠償を求める訴訟を提起したというニュースがありました。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140219-00000022-asahi-soci

この店は看板を出しておらず,オートロックの扉を店員が開けなければ中に入れないようになっているということで,まさに「隠れ家」ですね。

しかし,食べログに掲載されてしまったことで普通の一元のお客さんが多く押し寄せるようになれば,隠れ家ではなくなってしまいます。店主の気持ちはよくわかります。

提訴については2点ほど気になる点があります。


1点目

訴える相手は投稿した本人ではだめだったのでしょうか。

確かに,投稿した本人を特定するためには,発信者情報開示請求などの手続を経る必要がありますし,個人なのでお金を持っているかどうかということもネックになります。
しかし,行為の違法性という意味では,投稿を削除しなかったサイト側よりも,投稿してしまった本人の行為の方が,より違法と評価される可能性が高いように思います。

サイト側としては,サービスを提供しているだけという側面があり,また,サイト利用者との関係で,削除するには慎重な判断を要求されますので,よっぽどの内容でなければ,削除しなかったことをもって違法とまでは評価されないように思われます。また,同じ理由で,削除請求についてもサイトに対する請求の方が認められにくいと思います。

どちらに請求するかは悩ましいところだと思います。


2点目

営業権侵害の損害はどの程度認められるのでしょうか。

売上減少による逸失利益ではなく営業権侵害が損害として主張されています。
ある程度客が押し寄せるようになり,売上が減少していなければ,逸失利益は発生していませんから,営業権侵害でいくしかないのでしょう。

損害額の算定というのは悩ましいものです。
特に,典型的な事案ではなく,相場が決まっていない場合,請求認容額の見通しを立てるのは非常に困難です。

今回の場合,「隠れ家」として営業していくという営業権が侵害されたということになります。「隠れ家」としての営業は積み上げてきた経営戦略でもありますから,一定の賠償は認められるべきだと思いますが,どの当たりが相当額なのか,いろいろと調べてみないと見当がつきません。

過去にサイトに記事の削除を求めた例では,投稿を削除する代わりに訴えを取り下げるということで事実上和解したことがあったそうですから,もしかしたら,店主の狙いはそこにあり,請求金額はあまり重要ではないのかもしれません。


それにしても,提訴したことで更に有名になってしまわないかが心配です。

デヴィ夫人、公選法違反に言及「知らなかった」

2014.02.15 [ 神村 岡 ]

デヴィ夫人が,メールマガジンで都知事選の特定の候補者への投票を呼びかけたことが公職選挙法違反になると,警視庁から警告を受けたというニュースが流れていました。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140213-00000308-oric-ent

インターネットによる選挙活動は,昨年の4月19日の公職選挙法の改正で解禁されました(公職選挙法142条の3〜)。
もちろん,他の選挙活動と同様,選挙期間中に限られますが,ブログで政策を発信したりすることができるようになりました。

しかし,メールによる選挙活動については,候補者自身と政党のみに認められています。今後の全面解禁も検討されているようですが,今のところは一般の方はだめです。

しかし,そもそもなぜこのような制限があるのか,制限が合理的なのかについては疑問もあります。

もともと,選挙活動に制限があるのは,無制限に認めてしまうと各候補者が多大な費用をかけることとなり,資金力で勝敗がついてしまうため,そのような事態を避けるためだと思います。そうすると,費用のかからないメール発信などは制限する理由がないともいえます。

また,ブログとメールマガジンとでは,少なくとも実態としては,一定の読者層に情報発信をするという点で共通していて,差を設ける合理的根拠はないようにも思えます。

結局,公職選挙法という法律がインターネットの普及という時代の変化についていけていないということなのだと思います。
ただ,昨年の改正でインターネットでの選挙活動が解禁されたことは大きな一歩であることは間違いありません。遅すぎたかもしれませんが。

小学校の扉で指切断、両親ら提訴

2014.02.06 [ 神村 岡 ]

小学校の体育館で1年生が扉の取っ手に指を挟まれて指を切断するという痛ましい事故があり,児童と両親が市を相手に損害賠償を求める訴訟を提起したというニュースが出ていました。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140205-00000008-asahi-soci

事故にあった小学生の当時の衝撃やその後の苦労はいかばかりかと思います。

しかし,この訴訟で児童側の請求が認められるかについては,微妙なところではないかと思います。

児童側は,授業終了後に36人の児童が一斉に入り口のドアへ向かったという状況で,児童の様子を見守っていなかった講師に過失があると主張しているようです。

積極的に何かをしたことではなく,なすべき行為をしなかったことに過失があるといえるためには,今回のような事故が発生することが予測でき,それを回避するための手段を講じることができたといえることが必要です。

堺市教育委員会施設課によると,93の市立小学校の内3分の2ほどで同じタイプのドアを使っていて,これまでは今回のような事故はなかったそうです。ドアは体育館の入り口のドアですから,日常的に頻繁に使われていたことでしょう。果たして,ドアの取っ手に指が挟まれて怪我をするということを予測できたでしょうか。

私は,誰に責任があるわけでもない不幸な事故としか言えないのではないかと思います。

なお,学校での事故ですので,日本スポーツ振興センターから災害共済給付がなされ,児童は一定の補償を受けているはずです。ただ,同センターからの給付は最低限の水準ですので,児童が受けた損害の全てが金銭的に補償されるわけではありません。そのため,今回の訴訟で,児童側は同給付で補償されなかった損害について賠償を求めているものと考えられます。

それから,事故からちょうど3年が経過する頃ですので,消滅時効が完成するぎりぎりの時期です。ですので,これは完全に推測ですが,もしかすると直前まで提訴するか否かを迷われたのかもしれません。

中小企業診断士−実務補習

2014.01.31 [ 神村 岡 ]

今日から,中小企業診断士の実務補修に参加しています。

日程は1クールが5日間で,3クールありますので全15日間です。

ベテランの診断士の指導の下,4人でグループを組んで,実際の企業を訪問してヒアリングを行い,今後の経営戦略を練ります。

今日は1クール目の初日で,午前中にヒアリングの準備を行い,午後から企業を訪問してきました。

研修の一環ですので,経営診断というサービスを提供するという側面と,実務経験を積ませていただくという側面があります。どちらかというと,後者の側面の方が強いかもしれません。

企業からの法律相談は日常的に受けていますが,経営に関する相談は初めて経験しましたので,ヒアリングはとても新鮮でした。経営についての社長の考えなどをいろいろと聞くことができ,面白かったです。なお,自分が弁護士であることは社長には明かしませんでしたので,純粋に一研修生としての参加になりました。

今後,訪問した企業の今後の経営について,グループとしての診断をとりまとめ,企業に対してプレゼンをします。お役にたてるように頑張ります。


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